日中平和友好条約40周年に浮かれることなかれ 論説委員長・乾正人

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 記者の質問に答える外務省の秋葉剛男事務次官=8月29日、北京(共同)

 取材用語のひとつに「頭撮り」がある。

 サミット(主要国首脳会議)や外交交渉など非公開会合などで、冒頭の数分(わずか1分のときも)だけ取材することをいう。会場の広さや、警備上の都合を理由に、記者やカメラマンの人数が制限される場合が多く、希望者による抽選で決まるのが通例だ。代表取材を託された記者は、冒頭の要人発言を一言一句、正確に記録し、取材できなかった記者たちに退室後、ただちに伝える責務がある。

 パソコンが普及していなかった昔、代表取材のメモは手書きで丁寧に書かねばならず、気を使う作業だった。字を褒められた記憶のない筆者は、抽選に外れてほっとした記憶はある。

 昔も今も代表取材メモに、記者個人の感想や考え方が入り込む余地はない。産経の記者であろうと朝日であろうと、できあがるメモは同じなのだ。

 にもかかわらず、中国は秋葉剛男外務次官と王毅外相との会談の「頭撮り」から本紙記者を排除した。これに対し北京駐在の報道各社が一致して「頭撮り」をボイコットしてくれたのは、ありがたい限りだ。この場を借りて感謝申し上げたい。

 この一件に限らず、本紙に対する中国の嫌がらせは、常軌を逸している。日本記者クラブ主催の中国チベット自治区訪問団から本紙記者のみを排除しようと試み、李克強首相会見への出席を2年連続拒否している。

 今年は、日中平和友好条約締結40周年に当たる。中国側は、尖閣諸島沖への中国漁船出漁を控えさせたり、歴史問題での日本批判を抑制するなど40周年を盛り上げようと、しきりに日本に秋波を送っている。米中貿易戦争で劣勢に立たされる中、なんとか日本を手なずけ、日米離反を狙う習近平政権の意図は明らかだ。

 パンダに騙(だま)されて中国語を独学で学び、大学も中国語で受験した根っからの「親中派」の筆者だから言える。「一帯一路」だの「友好」だのと、40周年に浮かれるのはおよしなさい。言論の自由のない国との友好ほど虚(むな)しく、危険なものはない。