【蔭山実のスポーツ茶論】伸びしろは試合で見つかる - 産経ニュース

【蔭山実のスポーツ茶論】伸びしろは試合で見つかる

 「伸びしろは、試合で見つかる」。その通りだと、野球場に貼られていたポスターを見て思った。
 今夏も新潟県の三条市で「大学野球サマーリーグ」が開催された。レギュラーの座を狙う若手選手の育成の場として2015年に始まった。観客や応援のある野球場で対外試合を通じてこそ自分の可能性と、それを実現する課題が見える。それをしっかりとつかんで成長していく。そんな思いの込められた大会だ。
 東京六大学野球連盟の慶應義塾大学、早稲田大学、明治大学、立教大学、東都大学野球連盟の東洋大学、首都大学野球連盟の筑波大学の計6チームが、総当たり戦を行った。これに、地元の新潟医療福祉大学が開幕戦の1試合だけ参加し、慶大と戦った。
 8月9日から12日の4日間、2球場に分かれて戦った。1日に4試合と、甲子園の全国高校野球選手権並みの日程もこなした。ダブルヘッダーも当たり前なら、2試合目は別の球場に移動して戦うこともある。試合用ユニホームを初めて着る選手もおり、猛暑の中でも、みんなはつらつとプレーしていた。
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 サマーリーグは一方で、運営を参加大学の学生企画チームが行い、選手の育成だけでなく、裏方の学生の成長にもつながっている。
 チームとともに運営を支える球場指定管理者の責任者は最終日、「半年前にスタートしたが、そのときと今ではまったく企画チームの目の輝きが違う。学生たちは本当に成長したと思う」と語った。
 企画チームはチームの受け入れから、リーグの宣伝や広報、さらには企業からの協賛金集めなど、長い期間をかけて知恵を絞り、奔走した。当初はどうしていいか不安そうだった学生も、最後は誰もが仕切る力を見せていたと思う。
 企画チームの学生には、レギュラーにはなれなくとも、チームを支える学生スタッフとして日頃から活躍している4年生部員らがいる。実は裏方がメインの彼らであっても、試合に出場する機会を与えられる可能性は十分にある。
 早大は今回が初めての参加で、サマーリーグで初めて早慶戦も行われたが、早大の企画チームの学生が出場機会を得て、代打で本塁打を放った。「がんばっていたので、どこかで起用したかった」と早大チームの監督。その思いをはるかに超える一撃だった。裏方の活躍はチームを大いに盛り上げる効果もある。
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 もう一つ、サマーリーグの興味深いところは、地元の若者との交流も短い期間ながらしっかりと実になっていることだと思う。初めて行われた早慶戦では、両校の応援団も参加して、神宮球場のリーグ戦と違わない応援合戦を繰り広げた。
 ここでブラスバンドとして応援歌を演奏したのが地元・三条高校の吹奏楽部。譜面を基に大学生の指導を受け、一つ上のレベルを学んだ。一塁側早大、三塁側慶大という神宮球場での伝統を守って応援団を分けることはできなかったが、ネット裏に演台とブラスバンド席を設け、早慶で交互に応援する形で演じきった。
 雨模様から強い日差しへと、変わりやすい天候の下で600人以上の観衆が公式戦さながらの熱戦に声援を送った。その中で甲子園を沸かせた有望選手も企画チームの学生も「伸びしろ」を見つけ、さらに先へと努力を重ねていく。そんな姿を全国からファンの見にくる時代が待ち遠しい。