【主張】原発浄化水 海洋放出への理解を促せ - 産経ニュース

【主張】原発浄化水 海洋放出への理解を促せ

 いつまでも先延ばしにはできない問題だ。
 東京電力福島第1原子力発電所の敷地内のタンク群にたまり続けているトリチウム水の処分をめぐる案件である。
 第1原発の放射能汚染水は、浄化装置で各種の放射性物質が除去されているが、微弱な放射能を持つトリチウムは水素の仲間であり、水そのものとして存在するので濾過(ろか)もできない。
 このトリチウム水が増え続け、原発敷地内のタンク群での保管量は100万トンに近づいている。追加のタンクを建設する用地にも限界が見えてきた。
 事故で破損した原子炉建屋に流入する地下水が溶融した燃料(デブリ)に触れることで新たな汚染水が発生し、その処理後に残るトリチウム水も日々生じるという繰り返しによる結果である。
 トリチウム水処分の必要性は自明の理だ。その方法については、専門家の議論などで海洋放出が最も合理的であることが示されている。原子力規制委員会も以前から海洋放出を勧めている。
 トリチウムは発する放射線のエネルギーが弱い上に、体内に取り込まれても速やかに排出される。だから、全国の原発などでは、3・11以前から、海にトリチウム水を放出してきているが、問題が発生したことはない。
 こうした科学的根拠と実績を踏まえての海洋放出策なのだが、風評被害の拡大を警戒する漁業関係者の反発は強い。
 その気持ちは十分に分かるが、汚染水発生の根を絶つには、デブリの回収が不可欠である。そうした廃炉工程の本格化に当たってもタンク群の撤去、整理による作業スペースの確保が欠かせない。
 それにはトリチウム水の放出が必要なのだ。経済産業省の小委員会は8月末に福島県内と東京都内でトリチウム水の取り扱いについての説明・公聴会を開いたが、正しい理解の普及と風評の抑止のためには、広報・広聴活動の全国展開が必要だろう。
 誰が放出を決定し、その時期をいつにするかの選択も重要だ。
 規制委は海洋放出を唯一の方法として東電に決断を促しているが、東電が決めれば地元の反発を招くだけである。
 この大役を担えるのは、安倍晋三首相だけであろう。トリチウム水についても「アンダーコントロール」を宣言してもらいたい。