辺野古埋め立て 知事選目当ての「撤回」だ

主張

 沖縄県が、米軍普天間飛行場の移設のための辺野古埋め立て承認を撤回した。これにより、国が進めてきた埋め立て工事はいったん停止する。

 撤回は、日米同盟の抑止力による平和の維持と普天間周辺住民の安全確保に逆行する誤った判断であり容認できない。

 国は工事の再開を目指して、撤回の執行停止を裁判所に求めるなど法的対抗措置をとる方針だが、当然の対応である。

 執行停止が認められても、工事は数週間から数カ月も中断する。国と県は撤回の是非を法廷で争うことになる。極めて残念だ。

 謝花(じゃはな)喜一郎副知事は会見で、「翁長雄志(おなが・たけし)知事の熱い思いを受け止め、法に基づき適正に判断した」と述べた。撤回は、8月に死去した翁長氏の遺志に基づくといいたいのだろう。

 翁長氏は7月に、県の関係部局に対し撤回手続きに入るよう指示したが、沖縄防衛局の言い分を聞く「聴聞」が行われる前に亡くなった。

 知事不在にもかかわらず撤回を決めた「結論ありき」の姿勢は疑問というほかない。翁長氏の死去に伴う知事選(13日告示、30日投開票)を前に、県民の間の対立感情をあおる政治的パフォーマンスではないのか。沖縄の未来や平和、基地政策のあり方について、冷静かつ建設的に議論を交わすことにつながらない。

 そもそも、外交・安全保障政策を担うのは、国民の選挙によって構成される国会が指名した首相を長とする内閣である。自治体の長である知事に覆す権限は一切ない点を弁(わきま)えるべきだ。

 辺野古移設は日米両国の外交上の約束で、ようやく埋め立て土砂を投入できる段階になった。環境対策を含め撤回を要するほどの不手際が国にあるとはいえない。

 在沖米軍は、沖縄を含む日本や北東アジア地域の平和を維持するための重要な抑止力である。

 北朝鮮は核・ミサイルを一向に放棄していない。中国は沖縄の島である尖閣諸島を狙っている。1万人規模の海兵隊を2020年までに3倍以上に増強する計画だ。現実の脅威に備えなくてはならない。普天間飛行場は市街地の真ん中にあり、周辺住民の安全のためにも早期移設が急務だ。

 抑止力と住民の安全のいずれをも損なう「撤回」こそ、平和に逆行する行為である。