アベノミクス 強い経済への道筋を競え 実態見据えた現実的な論戦を

主張

 自民党総裁選は、5年半を超えるアベノミクスを総点検し、力強い経済を取り戻す方策を改めて議論する、絶好の機会である。

 景気回復といっても、国民の実感は乏しい。恩恵は十分に行き渡っていない。家計は財布のひもをなかなか緩めない。いずれもかねて指摘されてきたことである。

 これにどう応えるか。過去の実績を誇示するだけでは済まされない。足らざる部分に真摯(しんし)に向き合い、経済の好循環を果たす具体的な道筋を論じ合うべきである。

 来秋の消費税増税や米国発の貿易摩擦など懸案は山積している。いつまでもアベノミクスは「道半ば」というわけにはいかない。

 総点検する好機とせよ

 安倍晋三首相は出馬表明に際して「まっとうな経済を取り戻すことができた」と、これまでの政策の成果を訴えた。

 アベノミクスを過小評価することは適切ではない。

 日銀の大規模緩和により、旧民主党政権下で進んだ極端な円高や株安は修正され、多くの大企業が過去最高の収益を上げている。人手不足と表裏一体ながら雇用環境は大きく改善し、非正規社員を中心に所得も伸びている。

 それでも、足元の成長は力強さに欠けている。いまだ個人消費は盛り上がらず、何よりも、政権が重視してきたデフレからの完全な脱却にてこずっている。

 5年前に日銀の黒田東彦総裁が2年で達成できると約束した2%の物価上昇率の目標は見通せないままだ。物価が持続的に下落するようなデフレ状態ではないとしても、政権がデフレ脱却を宣言できないのは、多少の景気悪化ですぐにデフレに戻る懸念が拭えないからであろう。

 石破茂元幹事長は会見で、アベノミクスの成長戦略や地方創生などの目標が「失敗」に終わったと断じた。

 1強多弱の政治情勢の下で、国政選挙の度にアベノミクスの成果ばかりを訴えてきた政権与党の中から、明確に目標未達への批判が出たことは、経済政策を検証する上で意味ある動きといえる。

 ここに目をつむったままでは、いくら首相がアベノミクスの妥当性を訴えても説得力に欠ける。

 もちろん、政策の修正を求める以上、石破氏には効果的な施策を具体的に提示する責務がある。「日本創生会議」や「経済金融総合対応会議」など新たな会議を創設するというが、知りたいのは会議の構成ではない。

 そこで何を打ち出すのかという、将来像である。

 石破氏は、日本経済にとって重要なのは、いまだ1%程度にすぎない潜在成長率を高めることだという。そのためには、金融緩和で景気を刺激している間に、中小企業や地方経済の成長力を強化すべきだというのが政策の柱だ。

 消費増税の対応策示せ

 方向性は分かるが、この問題意識自体は、地方や中小を含む幅広い分野で生産性を高めようとする政権の路線とも重なる。

 安倍政権で地方創生担当相を務めた石破氏が地方重視というのなら、結果を出せなかった要因を徹底的に分析した上で、納得できる打開策を示す必要がある。

 その点は首相も同じである。地方の党員票を得ようと、双方が、地方向けのばらまき政策を並べるだけでは議論が深まるまい。

 財政健全化も論点である。首相は名目3%、実質2%という高めの成長率を前提とする税収増に期待して積極財政に傾斜する。だが実際には期待ほど成長率は高まっていない。これで本当に財政再建は進むのか。「財政規律にも配慮した経済財政運営」を掲げる石破氏との違いに注目したい。

 来年10月には消費税率を10%に引き上げる増税が予定される。首相は過去に2度、10%増税を延期した。それでいながら経済政策の成果を訴えてきたことが、いかにも分かりにくかった。首相も石破氏も来秋の増税に反対していないが、当時と現在で経済環境は異なるのか。増税を乗り切るための対策をどう講じるのか。これらを国民に丁寧に説明すべきだ。

 2年後には東京五輪もある。その後は景気が停滞する局面が来るかもしれない。貿易摩擦など海外要因のリスクは先が読めない。

 そうした中で、どう経済政策を講じるか。総裁選に求めるのは、経済実態に即した、現実的な論戦である。