居合道の不正慣行 カネで買える権威なのか

主張

 スポーツ界で不祥事が続くさなか、伝統の武道でも不正が行われていた実態に、暗然たる思いがする。

 全日本剣道連盟の「居合道」部門で、昇段審査などの際、審査を受ける側から審査員に多額の金銭が渡っていた。

 武道にとって段位は権威や尊敬の象徴だ。裏金で売り買いするのは「道」に反するどころか、愚弄している。

 不正は、最高段位の「八段」や最高称号の「範士」への審査で横行していた。平成24年の範士審査では、審査員全員が受審者から計100万円あまりを受け取っていたことが分かっている。

 全剣連は、これを「唯一」の不正合格と認定したが、疑問を拭えぬ判断である。金銭を渡して合格を働き掛ける行為は、昭和40年代には始まっていたとされるからだ。「実力だけで八段になった人なんて、ほぼいないのではないか」という証言もある。

 全剣連は昨年11月、不正に手を染めた関係者に対して資格停止や段位・称号の返上に相当すると判断したものの、処分の実行には3年間の猶予期間を設けた。

 関西地方に住む男性は、審査員側から計650万円の要求があったとして、内閣府に告発した。これも具体的な証拠がないとして調査を打ち切っている。

 甘すぎないか。剣道の伝統と権威を守る組織としての当事者意識が、まるで見えない。あしき慣習を排し、段位や称号の信頼性を取り戻す上でも、厳しい処断と調査をやり直すべきだ。

 競技団体の不祥事に通じるのは、一握りの者に強い権限が集中したことだ。居合道の場合、審査員に一度任命されると、長期にわたり委員を続ける慣例があった。過去に実態調査を求める声がありながら、全剣連は重い腰を上げなかった。閉じた組織が不正の温床になる、典型的な事例だ。

 八段や範士の有資格者は、剣道にかかわる人の尊敬の的という。それが今では、全国に約50人いる居合道の範士八段に疑いの目が向けられているのである。

 しかも、あらゆる武道の段位や称号の権威を揺るがした点で、今回の不正は、より罪が重い。

 段位認定などに伴う審査料は競技団体の財源の一つである。スポーツ庁は、同様の制度を持つ他の競技団体や組織に対し、強い態度で調査を指示してもらいたい。