文化財防災 千年の遺産を守るために

主張

 災害による文化財被害が相次いでいる。6月の大阪北部地震(最大震度6弱)では、京都、奈良など近畿圏で80件以上の被害があった。7月の西日本豪雨では被害が広域に及び、文化庁によると今月9日時点で26府県204件に上っている。

 文化財を守ることには先人の営みを受け継ぎ、次代につなぐという大きな意味がある。だからこそ、2年前の熊本地震では大きな被害を受けた熊本城が「復興のシンボル」とされ、その再建が被災者を含む地域住民の心の支えになっている。

 先人に学び、新たな知恵も活用して、文化財の修復と防災に努めたい。

 大阪北部地震では、京都府宇治市の平等院鳳凰(ほうおう)堂(国宝)の壁にひびが入るなどした。幸い軽微だったが、震度6強、震度7だったらどうだったか。さらに、地震に伴う火災への備えは大丈夫か。被害がなかった物件も含めて丁寧な検証が必要だろう。

 文化財の保護は、法隆寺金堂の火災を機に制定された昭和25年の文化財保護法で本格化した。平成7年の阪神大震災をきっかけに、耐震化への意識が高まり、国も対策を促している。しかし、建造物では外観を損なうような補強はしづらいといった事情もあり、なかなか進んでいない。

 美術工芸品が最も安全なのは博物館や美術館などに寄託することだが、仏像など宗教的理由で預けられない場合もある。

 古来の木造建築に学びつつ最新技術を活用する視点がほしい。大阪北部地震では木造の茶室の土壁が揺れの衝撃を吸収し、建物自体が守られたケースもあった。

 薬師寺西塔などの再建を手がけ最後の宮大工棟梁(とうりょう)と呼ばれた西岡常一さんは、古代の建築物に込められた先人の知恵に舌を巻く。大陸からの先端技術を理解した上で高温多湿の日本の風土に合わせた工夫が読み取れるという。「千三百年前の飛鳥時代の大工は賢いな。(中略)こういうのを文化というのとちゃいますか」(『木に学べ』)。千年の知恵に学ぶ姿勢を見習いたい。

 新たな取り組みもある。京都古文化保存協会は、インターネットで小口の寄付を募る「クラウドファンディング」を始めた。

 現代技術を活用して「千年の遺産」を守る。必要なのは柔軟な発想だ。