可視化映像 有力証拠としての活用を

主張

 可視化映像の証拠採用に、ためらいが生じることを危惧する。

 真実探求のための、あらゆる手段は排除されるべきではない。

 栃木小1女児殺害事件で東京高裁は、被告を無期懲役とした1審宇都宮地裁の裁判員裁判判決を破棄した上で、改めて無期懲役を言い渡した。

 1審判決を破棄したのは、取り調べの録音・録画(可視化)で犯罪事実を認定したのは「違法」と断じたためだ。

 高裁判決にもあるように、可視化を導入した刑事訴訟法の一部改正は、自白の強要などを防ぎ、容疑者の取り調べの適正化を図るために行われた。

 一方で、被告が取り調べ段階の供述を公判で覆すような場合、自白の任意性や信用性を証明する証拠として法廷で映像と音声を再生するケースが増えている。

 宇都宮地裁の1審公判では、7時間以上にわたって映像が再生されたという。

 高裁判決は「再現される被告の様子から自白の信用性を判断することには強い疑問がある」などとして「訴訟手続きの法令違反がある」とまで踏み込んだ。

 もちろん、自白の偏重は厳に戒めなくてはならない。

 高裁判決が指摘するように、秘密の暴露の有無や他の証拠との整合性などを重視し、十分にその信用性を吟味する必要がある。1審判決が十分これに応えたか、確かに疑問は残る。

 それでも可視化映像による判断を「違法」とまで断じたのは、行き過ぎではないか。

 可視化の本来の目的は、強引な取り調べによる冤罪(えんざい)を生まないことにある。映像が自白の任意性を担保するのは一つの事象の裏表であり、任意性と信用性は不可分の関係にある。一方のみの判断材料として認めることは、裁判員を混乱させないか。

 供述の信用性の判断材料としても、可視化映像は有力な証拠の一つとして位置づけるべきだ。その採用について綿密な検討を求めるのは当然である。

 それは、他のあらゆる証拠の取り扱いと同様である。

 改正刑事訴訟法は、裁判員裁判の対象事件と検察の独自捜査で平成31年6月までに全過程の可視化を義務づけている。膨大な量の録音・録画は、犯罪のさまざまな態様を物語るはずだ。