【主張】原爆の日 平和守る現実的な議論を - 産経ニュース

【主張】原爆の日 平和守る現実的な議論を

 広島は今年も原爆の日を迎えた。
 深く頭(こうべ)を垂れたい。多くの人命が、無差別に奪われた。何年たとうが、犠牲者の無念を思い、悼み続けたい。
 北朝鮮が米国との見せかけの緊張緩和を演出する中で迎えた8月6日でもある。核の脅威に何ら変わりはみられない。
 平和を守る誓いを新たにするからこそ、地に足をつけた安全保障論議が必要である。そのことを改めて銘記したい。
 広島市の松井一実市長が平和宣言を読み上げる。
 事前発表の骨子では、核兵器禁止条約の国連採択に尽力した非政府組織「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のノーベル平和賞受賞に触れ、被爆者の思いが世界に広まりつつあるとする。
 一方で自国第一主義が台頭し、核抑止や核の傘は不安定で危険であると指摘する。市民社会は朝鮮半島の緊張緩和が対話によって平和裏に進むことを望んでいる、などとしている。
 核兵器廃絶の願いは誰も否定しない。しかし、日本を核兵器で現実に脅かしているものは何か。目をそらしてはならない。
 北朝鮮の融和姿勢にごまかされてはいけない。米朝首脳会談後も大陸間弾道ミサイルを製造している兆候が米国で報じられた。ポンペオ米国務長官は北朝鮮が核分裂性物質の生産を続けていることを認めた。
 日本に対する脅威は去っていない。それにどう備えるかを考えるべきである。
 核兵器の使用を踏みとどまらせるのは、核抑止力である。米国やその核の傘の下にある日本が核兵器禁止条約に入っていないのは、妥当な選択といえる。
 核の惨禍に見舞われないよう、日本はあらゆる手立てを尽くさなくてはならない。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の導入を進めつつ、敵基地攻撃能力を持つ議論も前進させたい。
 日本では、唯一の戦争被爆国という歴史から、核抑止に関する議論をタブー視する風潮が長く続いてきた。「反核平和」の名の下に、左翼政治色の強い運動が繰り広げられてきた。
 だが、思考停止や政治運動は国民の安全をもたらさない。
 犠牲者に示すべきは、日本を子々孫々にまで守り伝える決意と行動であろう。