8月2日

産経抄
数百ページにもおよぶ証言や書類が添付された、日本ボクシング連盟告発状(画像の一部を加工しています)=8月1日、東京(早坂洋祐撮影)

 殷王朝の最後の王、紂(ちゅう)は、長い中国の歴史の中でも暴君の代表とされる。中国文学者の井波律子さんによると、無能な天子ではなかった。ただ、贅沢(ぜいたく)の限りを尽くし、周に滅ぼされる。「庭園に酒を満たした池を造り、樹木に干した肉を引っかけて肉の林とした」。後に「酒池肉林」の故事で知られるようになる(『酒池肉林 中国の贅沢三昧』)。

 ▼テレビのワイドショーは連日、日本ボクシング連盟の話題で持ちきりである。連盟には助成金を不正流用した疑いがある。アマチュアボクシング関係者の有志333人が、日本オリンピック委員会に送った告発状がきっかけとなった。

 ▼告発状の参考資料の中にある「おもてなしリスト」には驚いた。連盟の山根明会長(78)が地方を訪問する際、地元連盟がホテルの部屋に用意すべき果物や菓子、酒が、銘柄まで指定されている。肉は和牛肉しか食べず、目玉焼きは外はカリカリ中は半熟と、食事についても細かい指示があった。中国古代の王に比べてスケールは小さいものの、山根会長の口も相当おごっているらしい。

 ▼告発状はまた、山根会長の暴君ぶりも指摘している。ひいきにしている特定の選手を勝たせるよう審判に強要したというのだ。「そろそろ潔く辞めましょう、悪(あ)しき古き人間達」。WBA世界ミドル級王者の村田諒太選手(32)も、フェイスブックで山根会長と連盟を痛烈に批判する。

 ▼連盟は、告発状について、「事実と異なる部分が多くある」と反論している。ただこれだけの大騒動になったからには、山根会長自身が公の場できちんと説明しない限り、世間の納得は得られない。

 ▼連盟に関わるまでの経歴が、不明というのも首をかしげる。一体どんな人物なのか。