【主張】カンボジア総選挙 自由・公正とは呼べない - 産経ニュース

【主張】カンボジア総選挙 自由・公正とは呼べない

 形ばかりの選挙風景は共産党独裁国家を想起させる。カンボジア総選挙で、フン・セン首相の与党、カンボジア人民党が完勝した。
 5年前の前回総選挙で4割を超す票を得た野党の救国党は解党に追い込まれ、政権に批判的なメディアは弾圧された。こうした状況下で実施された選挙は「自由・公正」とかけ離れたものだ。
 欧米諸国は、フン・セン政権による反対勢力弾圧を強く批判し、選挙支援を停止したほか、政権への制裁にも動いている。
 この点について菅義偉官房長官はコメントを避け、カンボジアなどと「連携、協力を進めていきたい」と述べるにとどめた。
 カンボジアを突き放せば、中国に一層取り込まれるとの見方もある。だが中途半端な態度では、カンボジアにも国際社会にも、日本の姿を見失う。フン・セン氏への厳しい直言や、東南アジア諸国連合(ASEAN)への強い働きかけを避けるべきではない。
 民主化への第一歩として内戦終結後初の総選挙が1993年に実施され、四半世紀となる節目の総選挙だった。この間、曲がりなりにも民主化が進み、健全野党、メディアが育った。
 逆行させたのは内戦時代を含めて30年以上にわたり「首相」を務めるフン・セン氏である。自身の権力維持のための強権行使は厳しく指弾されるべきだ。
 フン・セン氏がそうした声に耳を貸さないのは、欧米に頼らずとも経済支援で政権を支える中国の存在があるからだ。中国は援助実施にあたり民主化促進などの条件を付けない。強権的政治指導者にとっては極めて好都合である。
 カンボジアは、中国と南シナ海問題を抱えるASEAN内にあって、中国の代弁者を務める。重大な問題は、強権を容認する中国の勢力圏が広がり、強権的な手法そのものが拡大、定着することである。そうした不安は、タイ軍事政権などにもある。
 日本は和平交渉からカンボジアに深く関与し、平和の維持に犠牲も払い、国造りにも官民挙げて尽力した。このことは、カンボジア国民にも理解されている。
 日本だからこそできるカンボジア政権への関与の方策があるはずである。少なくとも、そうした発想を前提に、フン・セン政権と向き合うべきではないか。