【マーライオンの目】「ほほ笑み」の裏には… - 産経ニュース

【マーライオンの目】「ほほ笑み」の裏には…

洞窟で発見された少年ら。タイ海軍特殊部隊が4日、フェイスブックに公開した(共同)
 タイ北部の洞窟に閉じ込められた少年ら13人全員が救出された2日後、帰途に就くタイ人潜水士たちがチェンライ空港で、成功をたたえる市民らにVサインで応じていた。
 ただ、タイ海軍特殊部隊の潜水士たちは、黒い正装だった。活動中に死亡した元隊員、サマーン・クナンさんの火葬式に向かうという。軍の専用機が待機していた。
 洞窟内の水中で、動かなくなっている作業中のサマーンさんを後続の潜水士が発見。中継基地に引き上げると、まだかすかな息があった。水は飲んでおらず、ボンベに空気も残っていた。疲労して、冷たい水中に長くいて意識を失ったと、ある隊員は当時の状況を語る。
 サマーンさんは除隊後、首都バンコク郊外の国際空港に勤務。真っ先に現地行きを志願したという。一緒に救出に向かった同空港勤務の潜水士たちと、バンコクに戻る飛行機で一緒になった。到着した空港では、彼らを歓声で迎える大勢の職員らの中心に、サマーンさんの遺影があった。
 退院した少年らの屈託のない笑顔に、日本からは「まずは反省だろ」との声も聞こえた。だが、少年たちは追悼のため短期の出家もした。
 仏教国タイは「ほほ笑みの国」。潜水士や少年たちの穏やかな表情の裏には、過酷な経験を乗り越えようとの意思も隠されている。(吉村英輝)