【主張】財務次官人事 「危機」はもうおしまいか - 産経ニュース

【主張】財務次官人事 「危機」はもうおしまいか

 信頼失墜への危機感があるのか、疑念を拭えぬ人事である。
 学校法人「森友学園」問題の決裁文書改竄(かいざん)や、前事務次官のセクハラなどの不祥事が相次いだ財務省が、岡本薫明主計局長を財務事務次官に昇格させた。
 岡本氏は改竄当時、国会対応や文書管理を所管する官房長を務め、文書での厳重注意処分を受けている。それでも「改竄に直接関わっていない」という理由で本命とされた岡本氏がトップに上りつめたのである。
 森友問題で嘘の答弁を重ねた佐川宣寿前国税庁長官や、セクハラ疑惑の福田淳一前事務次官をかばい続けた麻生太郎副総理兼財務相は今も同じポストだ。危機はすでに終わったかのように映る。
 官僚が仕えるべきは組織ではなく、国民である。その目線と乖離(かいり)した組織優先の論理は捨て去らなければならない。財務省はもちろん、これを認めた安倍晋三政権が銘記すべきことである。
 次官と国税庁長官という事務方トップ2人が3カ月以上も不在だった。国税庁長官は藤井健志同庁次長、主計局長は太田充理財局長が就任した。太田氏も森友問題で厳重注意処分を受けていた。
 政権内では、処分を受けた岡本氏を昇格させることへの批判を意識し、森友と関係のない別の幹部を起用する案もあった。だが、最終的には「岡本次官」で乗り切れると判断したのだろう。岡本氏は予算編成を取り仕切る主計畑が長く、早くから次官候補と目されてきた。組織内の秩序を優先させたとみられても仕方あるまい。
 そもそも、一連の問題への財務省の対応は不十分だった。国会の証人喚問で「訴追の恐れ」を理由に証言を拒んだ佐川氏は、文書改竄が不起訴となった今も明確な説明責任を果たしていない。福田氏は国家公務員法上の正式処分を受けておらず、処分相当として退職金を減額されただけである。
 同省は再発防止策を議論するコンプライアンス推進会議も設置した。全省的に内部統制の強化や意識改革を促すのだという。だが組織の解体的な出直しを図る覚悟を行動で示せなければ、信頼回復などとても望めまい。
 消費税率10%への引き上げや歳出改革など、財務官僚が全うすべき職務は多い。痛みを伴う政策に国民の理解を得ることの厳しさを再認識してもらいたい。