北朝鮮核危機 「時間稼ぎ」に騙されるな

主張

 6月の米朝首脳会談から1カ月半もたったが、北朝鮮は真の非核化に向けた措置を何らとってはいない。

 その厳しい現実をトランプ米大統領は直視し、核をはじめとする全ての大量破壊兵器と、あらゆる射程の弾道ミサイルの廃棄を北朝鮮に迫ってもらいたい。

 ブルックス在韓米軍司令官は21日の講演で、北朝鮮が核兵器製造工場の閉鎖や核燃料の処分などの行動をとっていないと指摘した。「核兵器製造能力は失われていない」というのである。

 その後、北朝鮮は北西部東倉里にあるミサイル発射場の主要施設の解体を始めた。だが、ミサイルの製造工場ではない。発射場の解体着手など評価に値しない。

 北朝鮮は、今この時も、地下施設で核弾頭と弾道ミサイルの製造を続け、核戦力を拡大し続けていると見るのが自然だ。

 朝鮮戦争の休戦協定締結65周年に合わせ、北朝鮮は戦没米兵の遺骨の一部を返還した。トランプ氏はツイッターで金正恩朝鮮労働党委員長に謝意を示した。

 遺骨返還は首脳会談の合意の一つであり、それ自体は望ましいことだ。だが、米ホワイトハウスが声明で「北朝鮮の前向きな変化に向けた行動に勇気づけられている」と、非核化の進展に期待感を示したのはナイーブにすぎる。

 ブルックス氏は講演で米朝交渉に「根本的に信頼が欠如している」とも断じた。極めて妥当な見方だ。

 トランプ氏は非核化交渉を急がず、期限を設けない考えを示したこともある。不誠実な北朝鮮に甘い顔をみせればつけあがるだけだ。北朝鮮は朝鮮戦争の終戦宣言を要求するが、安易に応じては危うい。北朝鮮に対する軍事的圧力が一層弱まり、将来的には在韓米軍の撤退につながりかねない。それでは北朝鮮が核・ミサイル廃棄にますます応じなくなる。

 米兵の遺骨返還や形ばかりのミサイル発射場の解体は、北朝鮮が核戦力を強化する時間稼ぎのための宣伝戦術であり、騙(だま)されてはなるまい。

 北朝鮮が真の非核化に本気で踏み出そうとしているかを判断するバロメーターは、核・ミサイル計画、施設、戦力の全容の申告と、米当局による査察の受け入れである。その実現に向け圧力を強めなくては、平和は確保できない。