【主張】G20と保護主義 対米摩擦の打開諦めるな - 産経ニュース

【主張】G20と保護主義 対米摩擦の打開諦めるな

 協調どころか、歩み寄りの気配すら見えない現状に、枠組み自体の無力感も漂う。それでも対米摩擦の打開を諦めるわけにはいかない。
 アルゼンチンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が、貿易摩擦の激化により「世界経済の下ぶれリスクは増大している」とする共同声明を採択した。
 争いを仕掛ける米国を含めて危機感を共有することはできた。問題は、リスク緩和のため強化すると明記した「対話と行動」の効果をいかに高められるかである。
 保護主義への傾斜が国内支持につながると確信するトランプ米大統領に対し、これがもたらす米国の不利益を具体的に認識させなければならない。
 特に日本は来年のG20議長国である。欧州などとも連携し、米国が孤立主義から脱するよう重層的に働きかける必要がある。トランプ氏との関係が良好な安倍晋三首相は説得の先頭に立つべきだ。
 3月のG20会議でも対話と行動の必要性が指摘されたが、状況は逆に悪化した。米国は日欧を含む鉄鋼の輸入制限や、知的財産侵害での対中報復関税を連発し、自動車への高関税も検討中である。
 「貿易戦争」が、国境を超えて結びつく世界経済を下押しする懸念は深刻だ。国際通貨基金(IMF)の試算では、世界の国内総生産(GDP)は最大0・5%縮小する。米国は0・8%減だ。日本企業の経営心理も冷え込もう。
 米商務省による自動車関税の公聴会では、米国の自動車業界からも反対の声が相次いだ。報復関税の応酬は米国の雇用や消費にも悪影響を及ぼす。そんな米国内の批判に対して、米政権はもっと真摯(しんし)に耳を傾けるべきである。
 日本も、あらゆる手を尽くしたい。米国の産業界や議会などを巻き込んで敵対的な通商外交を改めるよう促す。世界貿易機関(WTO)提訴などで各国と共同歩調を取ることも喫緊の課題だ。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や日欧経済連携協定(EPA)で成果を重ね、孤立主義の弊害を米国に示すことにも意味がある。
 米国が中国の覇権主義的な動きに対抗することを真に狙うのならば、問題意識を共有する日欧と一緒に中国に迫るのが筋である。その場とすべきG20で米国が孤立することは中国を利する。その点も粘り強く訴えるべきである。