東京五輪まで2年 日本の可能性示す大会に スポーツ界は存在感みせよ

主張

 2020年五輪の招致レースで東京が掲げたキャッチコピーは、〈今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ。〉だった。

 いま「夢」は、さまざまな可能性に形を変えて、2年後の社会を動かそうとしている。

 例えば、実用化が期待される自動運転技術、選手村予定地の東京・晴海地区で計画される水素社会といった、日本の最先端技術はその一つだろう。五輪期間中の、交通インフラの負荷軽減に向けた時差出勤などの取り組みもまた、日本が世界に提示できる社会モデルの一つかもしれない。

 ≪山積する課題を好機に≫

 2年後の7月24日に開幕する東京五輪は、これら日本の可能性を示す大会である。残されたわずかな準備期間で何よりも大事なことは、大会を成功させることだ。それには、日本中が歓喜に沸いた5年前の招致決定時の情熱を国民一人一人が共有し、「夢」を描くことである。

 東京大会は、五輪史の大きな転換点となる。野球・ソフトボールなど5つの追加競技を含め、史上最多の33競技、339種目を実施する前例のない五輪となる。

 既存施設や仮設施設の活用でコストを抑える国際オリンピック委員会(IOC)の新たな方針を受け、競技会場の4割が都外となった。一時は2兆円を超えるとされた大会経費は、1兆3千億円余りに削り込まれている。

 広域開催に伴う輸送や会場警備を低コストの制約下でどう実現するか。「安全、安心、確実」な五輪の開催には社会の理解と協力が不可欠だ。東京の取り組みが今後の開催都市のモデルとなる。

 暑さ対策や交通インフラの効率的運用など山積する課題は、むしろ解決に向けた日本の力を世界に示す好機である。路面温度を抑えるアスファルト舗装、歩行者の体感温度を下げる噴霧機の設置など「酷暑の五輪」だからこそ生かせる日本の技術があるはずだ。

 交通需要の集中緩和も焦眉の急だ。東京都は約800の企業や自治体と連携し、7月上旬から時差出勤などを奨励する「時差ビズ」を行っている。政府の最重要課題である「働き方改革」にもつながる試みだ。大会期間中の交通規制を含め、経済界の協力なしには成り立たない。

 福島でスタートする聖火リレーもまた、日本の力を示す場である。平成23年3月の東日本大震災以降、日本では各地で災害が相次いだ。47都道府県を巡る聖火リレーの光景は、豪雨災害や地震などで傷ついた国土の復興を世界に示してくれるだろう。

 先にロシアで開催されたサッカーのワールドカップを成功に導いたのは、低い下馬評を覆して8強入りした自国ロシア代表の健闘であり、どこか冷たい国の印象を一変させたボランティアの笑顔だった。日本のボランティアには、これを上回る「おもてなし」の笑顔で迎えてもらいたい。

 ≪「おもてなし」の出番だ≫

 日本選手団には大きな期待がかかる。日本オリンピック委員会(JOC)は東京五輪の目標を「金メダル30個」と設定した。過去の夏季大会で最も多かった16個の約2倍だ。

 道のりは険しいものの、看板競技の柔道やレスリング、競泳、体操で多くの有望株が育っているのは心強い。卓球やバドミントンなどかつては表彰台すら現実味のない夢だった競技が、「金有力」の期待を担う。国を挙げた強化策が埋もれた才能を掘り起こした成果であり、胸を張っていい。

 陸上短距離の日本勢で初めて10秒の壁を破った桐生祥秀や彼のライバルたちには、五輪の舞台で9秒台を実現してほしい。

 一方で、主役となるスポーツ界は不祥事続きでもある。ドーピングの摘発が相次ぎ、レスリングでは前日本女子代表監督による選手へのパワーハラスメントが表面化した。五輪競技ではないが、日本大アメリカンフットボール部の悪質なタックル問題は、スポーツ界の掲げる「高潔」にほど遠い。

 社会の後押しが必要な時期に、自らの手でスポーツの価値を貶(おとし)めているのは残念である。選手らは、自らの活躍を通して、スポーツ界が失いつつある信頼を取り戻す責務があると自覚すべきだ。

 する、観(み)る、支える-。スポーツに関わるすべての人が主役として輝く。そんな五輪を2年後の東京から世界に発信したい。