五輪の競泳日程 選手第一の理念忘れたか

主張

 2020年東京五輪の競技スケジュールの大枠が固まった。決勝の時間帯をめぐって継続協議となっていた競泳についても、午前に実施する方針となった。

 残念な結論と言わざるを得ない。五輪の主役は選手である。4年に1度の舞台で選手が存分に力を出し、記録を伸ばしてこそ大会は盛り上がる。

 競泳決勝の午前実施の決着は選手サイドの視点が欠落している。競泳は予選や準決勝を伴う競技であり、主要な国際大会は夕方以降に決勝を行うのが通例だ。

 競泳関係者からは「午前決勝は記録に悪影響が出る」という懸念の声があがっていた。東京五輪組織委員会や国際水泳連盟(FINA)も夕方から夜にかけての決勝を主張していた。

 午前決勝となれば、選手は朝早くから屋内の競技会場に入らなければならない。就寝、起床、食事など日頃の生活パターンを根本から組み替える必要にも迫られ、負担が大きすぎる。多くの世界新記録も期待される競泳だが、これでは競技の魅力が損なわれる。

 午前の決勝は、巨額の放映権料を払う米国のテレビ局が北米でのゴールデンタイムでの放送に合わせて希望していた。08年の北京五輪でも競泳の決勝は午前に実施されている。

 FINAは18日の理事会で午前決勝案に同意することを決めたと発表し、組織委の武藤敏郎事務総長も「FINAの意向を尊重する立場だ」とこれを受け入れる姿勢を示した。米国の視聴者を優先し「選手第一」の理念を置き去りにするのは主客転倒ではないか。

 16年のリオデジャネイロ五輪は全競技で30個近い世界新記録が出た。運営面では多くの課題が指摘されたが、選手の能力を最大限に引き出した点では大成功といえる五輪だった。

 選手を置き去りにして、大会の成功はあり得ないはずである。

 一方で、日中30度を超える酷暑が予想される中、マラソンのスタートは当初計画の午前7時半から7時に前倒しするなど、屋外競技の多くで開始時間を早めたことは評価できる。

 暑さ対策に加え、選手の輸送や会場警備、ボランティアの配備など、組織委は具体的な開催準備をさらに進めてほしい。計画はすべて、「選手第一」を基本としなければならない。