【正論】二階幹事長殿 「海の日」の固定を 日本財団会長・笹川陽平 - 産経ニュース

【正論】二階幹事長殿 「海の日」の固定を 日本財団会長・笹川陽平

日本財団の笹川陽平会長(栗橋隆悦撮影)
 ≪祝日には託された意味がある≫
 7月16日に今年の「海の日」を迎えた。秋にかけ全国で約1500に上る関連企画や催しが開催され、青少年を中心に延べ200万人以上が参加する。全国47都道府県の地方テレビ局にも取り上げられる予定で、文字通り全国的な一大イベントとなる。
 海の日は平成8(1996)年、国民の祝日として7月20日に固定された。明治天皇が地方巡幸を終え横浜港に帰着された日に由来し、祝日化を求め2276自治体(当時)が意見書を採択し、1038万人の署名も集まった。
 しかし土曜、日曜日に月曜日を加え3連休とするハッピーマンデー制度の導入に伴い15年から「7月の第3月曜日」となった。現在、海の日のほか、成人の日、敬老の日、体育の日がこの制度の対象となっているが、毎年、日にちが変わるこの制度には、どうしても違和感がある。国民の祝日は、その日を固定してこそ、託された意味が国民に共有されるからだ。
 ハッピーマンデー制度の創設には、全国旅行業協会(ANTA)の会長でもある自民党の二階俊博幹事長が尽力された。“失われた20年”で経済が低迷するなか、3連休が観光振興、ひいては地方創生に成果を挙げたのは否定しないし、その功績に敬意も表する。
 しかし6月の記者会見で早々に、海の日固定に反対する考えを表明されたのは感心しない。政権政党の幹事長の立場にあるとはいえ、海の日の扱いは総合海洋政策本部のテーマであり、その本部長は安倍晋三首相だからだ。
 しかも海の日をめぐっては、2つの議論が並行して進んでいる。ひとつは日本旅行業協会(JATA)、日本ホテル協会など観光業界の動きだ。関係7団体でつくる「働き方改革など休暇制度を考える会議」は4月、ハッピーマンデー制度の維持を決議し、3連休に伴う経済効果を前面に打ち出している。
 もうひとつは200人を超す超党派の国会議員でつくる「海事振興連盟」(衛藤征士郎会長)の活動だ。ハッピーマンデー制度では海の日の趣旨が損なわれるとして再固定化に向け、秋以降、祝日法改正案の国会提出を目指している。6月、自民党内閣第一部会で行われたヒアリングでは海の日固定を求める議員が圧倒的多数を占めた。
 ≪環境や防災面からも急を要する≫
 筆者が海の日固定にこだわる一番の理由は、海の劣化が一刻の猶予もならない深刻な段階に来ている点にある。先月、本欄に投稿した「海洋の危機に国際的統合機関を」でも触れたように、海は現在、人口が76億人に達した人類の社会・経済活動に伴い漁業資源の枯渇、海の温暖化・酸性化やプラスチックごみの流入が進み、このまま放置すれば早晩、人類の生存にも影響する状態にある。
 さらに防災面からも海の日の固定は急を要する。今回の西日本豪雨災害を見るまでもなく異常気象に伴う災害の巨大化が目立ち、南海トラフ地震など大型地震の発生も懸念されている。防災強化には、異常気象や大地震、さらに大地震の際に予想される大津波など海底を中心にした構造解析が必要となる。
 次いで資源面だ。わが国は総面積で世界6位となる領海、排他的経済水域(EEZ)を持ち、そこにはメタンハイドレートやマンガン団塊、レアアースなど豊富な資源の存在が確認されている。資源小国である日本の将来はこうした資源の活用にかかり、海底調査や技術開発など海の研究が欠かせない。
 観光業界は海の日の3連休に伴う経済効果を約400億円と見込んでいるが、日本近海に眠る資源は数兆円に上ると推計され、資源開発に向け新しい産業の創出も期待できる。
 ≪海洋国家として存在感を示せ≫
 海に関しては国連が6月8日を「世界海洋デー」(World Oceans Day)と定め、国際海事機関(IMO)も9月最終週の1日を「世界海事日」(World Maritime Day)とし、米国や中国にも海の日がある。
 こうした中、唯一、祝日とする日本の海の日には、海の恵みを受け、海に守られてきた海洋国家として、国際社会の先頭に立って海の危機に取り組む決意が込められている。
 “待ったなし”の海の危機に対し、国際社会はなお陸中心の発想が強く、国連中心に海を守る動きがようやく始まったとはいえ、全体の危機感はなお希薄である。誰かが世界の先頭に立って行動を起こす必要があり、その可能性を持つのが日本である。行動することが国際社会での日本のプレゼンスにもつながる。
 こうした点を総合的に踏まえれば、国民、何よりも次代を担う青少年に海の大切さを伝えるためにも、海の日の再固定化が急務である。海にどう向き合うか、それこそが国家の大計である。二階幹事長には大所高所からこの問題に対処し、今以上の名幹事長になっていただきたく思う。(日本財団会長・笹川陽平 ささかわ ようへい)