【主張】日欧EPA署名 利益の大きさ米に見せよ - 産経ニュース

【主張】日欧EPA署名 利益の大きさ米に見せよ

 安倍晋三首相と欧州連合(EU)のトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長が、昨年末に妥結した日EU経済連携協定(EPA)に署名した。
 これにより世界の国内総生産(GDP)の3割を占める巨大経済圏が来年早期にも誕生する。先に国内手続きを終えた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)と併せ、日本の成長に欠かせぬ礎となる。
 首相は署名後、「世界的に保護主義の懸念が高まっており、日欧が自由貿易体制の重要性を発信する意義は大きい」と述べた。
 トランプ米政権は、経済、軍事両面で覇権を争う中国にとどまらず、同盟関係の日欧にも貿易戦争を仕掛けている。その対立軸とするためにも、日欧は協定の成果を着実に重ね、世界の自由貿易を牽引(けんいん)していかなければならない。
 関税の撤廃は自動車などの対欧輸出の追い風となる。欧州産のワインやチーズなどを安価に輸入できるようになり、消費者にも恩恵が及ぶ。成果を最大限享受できるよう、国内農業の競争力強化などにも万全を期すべきだ。
 電子商取引や知的財産などのルールも幅広く盛り込んだ。EUは5月、個人データの域外持ち出しを原則禁止とする規制を導入したが、日欧は互いの進出企業が現地で得たデータを円滑に持ち出せることでも合意した。デジタル情報の国家管理を強める中国に対抗する上でも、日欧が規制で足並みをそろえることは重要である。
 米国は、日欧を念頭に輸入自動車への高関税を検討している。そのタイミングでの署名は米国への牽制にもつながろう。
 米国は豚肉やワインなどの対日輸出で欧州より不利になる。TPP離脱で農産物の対日輸出拡大が期待できなくなったが、それに追い打ちをかける事態となる。
 米国は日本との2国間協議で対日貿易赤字の削減を強硬に求めるだろう。だが日本は、日欧EPAやTPPで認めた水準を超えるような米国優位の要求なら、これを受け入れる必要はない。
 トランプ大統領に自由貿易が持つ本来の意義を訴えても翻意させるのは難しい。ならば多国間連携の実利を具体的に示し、その輪から外れる不利益を認識させられるかである。米政権のみならず、議会や州政府、農業や自動車業界などにも働きかけ、孤立主義の弊害を訴えることが肝要である。