【ポトマック通信】関税が生んだ街 - 産経ニュース

【ポトマック通信】関税が生んだ街

鉄鋼とアルミニウムの輸入制限に関する文書に署名後、掲げるトランプ米大統領。周囲にいるのは鉄鋼とアルミの業界関係者=3月8日、ワシントンのホワイトハウス(UPI=共同)
 トランプ米政権が国内産業を保護するため、鉄鋼の輸入品に関税を課した。貿易相手国が「自由貿易に反する」として厳しく批判しており、関税はすっかり“悪役”として名をはせた。
 だが、その関税によって生まれた街がある。中西部イリノイ州のグラニットシティーだ。「鉄鋼の街」として知られ、大手メーカーが同所に持つ工場では、政権の関税の恩恵を受けて雇用を増やした。街が活気づいた様子は紙面で報じた。
 街の由来はこうだ。
 19世紀にドイツ移民のニードリングハウス兄弟が、すず食器製造会社を同所に置いた。兄弟は商品や製造法を改良して商売を広げる一方で、政界に進出。すず食器への関税賦課に力を注ぎ、やがて政府による関税引き上げにつなげた。その甲斐あって事業は大成功。街が拡大して1896年、行政区としてグラニットシティーが誕生したという。
 人口3万人弱の街を訪れると、小さな街役場のホールに、兄弟の偉業をたたえるレリーフがあった。
 「多くの雇用を生んだ偉大なリーダー。彼の見識と情熱が街を生んだ」
 鈍く黄金色に輝くレリーフには、そんな碑文が刻まれていた。レリーフは後世に作られたものだが、「今も昔も、保護主義のキーワードは『雇用』なのだ」と、時代を超えた符合を感じた。(塩原永久)