米欧同盟 亀裂を修復し対露警戒を

主張

 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が、加盟国の国防費を2024年までに国内総生産(GDP)比2%に拡大する目標を再確認して、閉幕した。

 共同宣言は、陸海空兵力の即応態勢確立も合意した。ロシアの脅威が増す中で、加盟29カ国の防衛力増強が進むことは望ましい。だが、2日間の会議で浮き彫りとなったのは、トランプ米大統領の過激な言動を引き金に生じた米欧の亀裂だった。

 相互不信は同盟の抑止力を損ない、欧州の混乱をもくろむロシアに付け入る隙を与える。16日に開かれる米露首脳会談を前に、米欧首脳の信頼関係が傷ついたのは、憂慮すべき事態である。

 2%の共通目標は、ロシアのクリミア併合を機に、14年のNATO首脳会議が明確化したものだ。その時点で目標に届いた国は4カ国だったが、18年末までに8カ国に増える見通しだ。

 目標の前倒し達成を迫るトランプ氏の方向性は間違っていない。問題なのは圧力の手法である。

 トランプ氏は共通目標について突然、「4%」への倍増を求める揺さぶりをかけた。安全保障で米国に頼る欧州諸国が巨額の対米貿易黒字を抱える通商関係への不満をあらわにした。

 国防費の比率が低いドイツには、ロシア産天然ガスに依存している点をやり玉に挙げ「ロシアの捕虜」とこき下ろした。そこにはアフガニスタンへ米軍に次ぐ兵力を派遣するドイツの軍事貢献への配慮はない。同盟国を軽んじるトランプ氏の言動に、他の加盟国は動揺し、不信は高まった。プーチン露大統領との首脳会談で、安易な妥協に走る疑念もくすぶる。

 東西冷戦期以来、米国が安全保障上の多大な負担をしてきたおかげで、西欧諸国が経済統合を進められた面は否めない。米国の負担感は理解できる。だが、NATOは日米同盟と同様、相互の信頼を基本に、自由と民主主義という価値観を共有する間柄だ。

 ロシアや中国などの強権国家が既存の国際秩序の破壊に動いている。米欧の亀裂は中露を利するだけだ。米欧はもとより、日本を含む世界の平和と安全を損なってしまう。

 トランプ氏は米欧同盟の重要性を認識し、米露首脳会談ではプーチン氏に厳しく向き合ってもらいたい。