「心は女性」入学へ 男女の否定につなげるな

主張

 お茶の水女子大が、心と体の性が一致しないトランスジェンダーの学生を受け入れると発表した。学生らへの周知と理解を得て、慎重に進めてもらいたい。

 2年後の2020年4月からで、これまで「女子」としてきた出願資格を「戸籍または性自認が女子」と改める。

 記者会見した室伏きみ子学長は「真摯(しんし)に学ぶことを受け入れるのは自然な流れだ」と説明した。

 そのこと自体は理解できる。家政学部系の専攻分野など女子大ならではの学びがある。

 少数者への偏見や差別をなくすのは当然だ。学びたいとの意欲を妨げるべきではない。

 ただ、声高に門戸開放を訴えるような問題なのか。一口にトランスジェンダーといっても、さまざまな態様があるといわれる。静かな環境で配慮してもらった方がいいと考える人もいるだろう。

 受け入れに当たって課題は少なくない。

 医学的知見からの性同一性障害については、平成16年に特例法が施行され、複数の医師の診断など一定の条件で戸籍上の性別を変更することなどを認めている。

 お茶大は、それより広い概念のトランスジェンダーを受け入れるようだ。診断書がない場合でも対応を考えたいというが、具体的な確認方法は今後検討する。あいまいではかえって混乱しないか。周囲の理解は得られるか。

 施設の問題もある。男女共学の大学でもトランスジェンダーの学生らに配慮し、誰でも使えるトイレなどの設置を進めている。一方、そうしたトイレを使うことが、かえって偏見や差別を助長するとの考えもある。集団生活を送る上で互いが理解し、自然に学生生活を送れる環境が大切だ。

 トランスジェンダーについて一層の社会の理解も欠かせない。岩波書店の広辞苑第7版で「LGBT」を「多数派とは異なる性的指向をもつ人々」としたことに、トランスジェンダー(T)は「性自認に関する言葉」などの指摘があり、訂正する問題も起きた。

 誤ったジェンダーフリー(性差否定)教育につながることも心配だ。教育基本法では男女が互いに敬い、協力し合う理念が盛り込まれている。少数者の尊重が、男らしさや女らしさの否定につながっては、女子大の歴史的な存在意義も失われよう。