「最悪の事態」に備えた総社市の対応の速さ

野口健の直球&曲球

 またしても大規模災害が発生した。西日本を中心としたこの度の災害は、豪雨災害として平成に入って最悪の被害をもたらした。先月は大阪北部を震源とした直下型地震で大きな被害を出したばかり。一昨年の熊本地震の際、共同でテント村を運営した岡山県総社市も豪雨によって大きな被害を受けた。片岡聡一市長は「われわれが助けてもらう立場にたってしまった」と。この国で生きていく以上、自然災害はまさに「明日はわが身」なのである。

 今回も総社市の対応の速さには目を見張るものがある。被災地で重要となってくるのはタイムリーな情報。片岡市長が発信し続けるツイッターからの情報がリアルで具体的だ。「総社市全域に避難勧告を発令」「高梁川が危険です。高いところに避難してください」から始まり、全国から集まるボランティア団体の受け入れや活動の内容や感謝の言葉まで、現場の写真とともに詳細に情報発信し続ける。

 連日、1千人近いボランティアが市庁舎に集まる。驚かされるのがその多くが高校生や大学生たちだったこと。片岡市長は、活動を行った学生たちと意見交換を行い、現場の声を集め、次の指示に生かしていく。それらの様子もタイムリーにアップされるため、さらにボランティアは集まり、必要な救援物資が全国から届けられる。

 「災害の時は全て1・5倍増しのスピードでジャッジし、1・5倍の熱意と量をこなす。首長が決断しないと現場が動けない。無理やり、決めることもある」と片岡市長。平成25年、総社市は全国に先駆けて「総社市大規模災害被災地支援に関する条例」を制定、市長の権限において即座に被災地支援が行える体制を整えた。昨年9月には「総社市大規模災害被災者受け入れに関する条例」を制定。市内の空き家を想定し、所有者と交渉を進め、被災者の住居に充てるというものだ。

 よく「想定外」という言葉が使われるが、日頃から「最悪の事態は起きるもの」とリアルにイメージし備えておくことによって「より多くの命」が救われていくのだろう。私も現場に入り、できることをやっていく。

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【プロフィル】野口健

 のぐち・けん アルピニスト。1973年、米ボストン生まれ。亜細亜大卒。25歳で7大陸最高峰最年少登頂の世界記録を達成(当時)。エベレスト・富士山の清掃登山、地球温暖化問題、戦没者遺骨収集など、幅広いジャンルで活躍。新刊は『震災が起きた後で死なないために』(PHP新書)。