【蔭山実のスポーツ茶論】日本が育んだ「ノーサイド精神」 2019年W杯で世界を変える - 産経ニュース

【蔭山実のスポーツ茶論】日本が育んだ「ノーサイド精神」 2019年W杯で世界を変える

 ブランビーズ戦の後半、突進するサントリーのツイ(中央)。そのままトライを決める=秩父宮
 「遠くから来てよかった」。スーパーラグビー(SR)で優勝経験もあるオーストラリアの強豪クラブチーム、ブランビーズのヘッドコーチ(HC)、ダン・マッケラーはそう満足そうに語っていた。
 北半球ではラグビーのオフシーズンにあたる6月17日、秩父宮ラグビー場(東京都港区北青山)で開かれた「みなとラグビーまつり2018」で、日本ラグビー界の王者、サントリー・サンゴリアスと親善試合を戦ったときのことだ。
 ブランビーズの先制で始まったこの試合、サンゴリアスが続けて得点して逆転し、14-12とサンゴリアスのリードで前半終了。後半はシーソーゲームとなり、サンゴリアスが残り10分でまた逆転して、28-26の小差で勝利を収めた。
 2019年のワールドカップ(W杯)日本大会に向けて各国代表がテストマッチを戦う一方での試合。双方とも主力を代表に取られ、ベストの状態ではなかったかもしれない。だが、「世界への挑戦。SRの壁を破る」と、この試合に照準を合わせてきたサンゴリアスが速い展開のラグビーで、体格で勝る相手を翻弄したのは見事だった。
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 印象的だったのは試合展開だけではなかった。試合後、ジャージーを交換し、双方の選手が交じって子供たちと記念写真。「おまつり」らしいといえばそれまでだが、ラグビーの持つ「ノーサイド精神」がよく分かる光景でもあった。
 これこそ来年のW杯の象徴であってほしい。というのも、「ノーサイド精神」を育んできたのが日本のラグビー文化だからである。試合が終われば、敵も味方もなく、互いに健闘をたたえ合う。スタンドで観戦する双方のファンも同じだ。
 「ノーサイド」という言葉は英語に存在はしていても、本来、こうした精神は意味合いに含まれていなかった。第一線で活躍するラグビージャーナリストからこんな話を聞いた。
 「ノーサイドはイングランド発祥の古い言葉で、試合が終われば、ボールはどちらのチームの側のものでもないという発想から、レフェリーが試合終了を告げるときに使ったルール用語です。海外ではもはや死語に近く、試合終了はフルタイムと言います」
 「フルタイム」とは味気なさを感じるが、それもまた世界の常識である。
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 この常識を変えられるのが、日本の生んだ精神だろう。「戦い終われば、敵も味方もない」というもともとあった精神を、日本の先人たちが「ノーサイド」という言葉に重ね合わせて語り継いできた。
 イングランドでも日本通なら意味は分かるらしいが、オセアニアでは通じないという。マッケラーHCが満足を感じたのも、日本の精神を初めて体験できたからではないだろうか。
 この精神をW杯で世界に広めるもう一人の主役がボランティアである。「TEAM NO-SIDE」を標語に募っている。関係者は「サッカーのW杯日韓大会が行われた2002年はまだスポーツのボランティア文化はなかった。07年の東京マラソンから始まったが、国際大会では19年が初めてとなる」と話す。
 テストマッチでは世界の強豪国も中6日で3連戦を行い、本番に向けた調整に入った。番狂わせがまれというラグビーだが、思わぬところで強豪が苦しむ場面もあった。19年、どんなW杯が訪れるのか。世界を変える日本に期待したい。