【風を読む】学があってテロに走ったのはオウム入信者だけではない 論説副委員長・榊原智 - 産経ニュース

【風を読む】学があってテロに走ったのはオウム入信者だけではない 論説副委員長・榊原智

 山梨県上九一色村(当時)のオウム真理教施設。中央の白い建物は礼拝堂、手前はサリン製造プラントがあった第7サティアン=平成7年2月
 テロに走ったオウム真理教の幹部の多くが高学歴者だったことが、意外感をもって受け止められてきた。
 だが果たしてそうか。筆者はさほど不思議には思わない。
 オウム確定死刑囚の経歴をみると東京、京都、筑波、大阪府立、早稲田各大学の大学院や京都府立医大、早大、神戸大などが並ぶ。米紙ワシントン・ポスト(電子版)はオウムが「日本のエリート大学などから多くの信者を増やした」と伝えた。
 高学歴者が、テロなど残虐、卑劣な犯罪にあまり関わらないという見方があるとすれば、とんだ買いかぶりだ。近現代史の負の部分を無視している。
 オウムだけではない。科学的真理とやらを語るという共産主義に「入信」した人々も、テロや暴力事件を繰り返してきた。そこに高学歴者は掃いて捨てるほどいた。
 たとえば、弁護士だった徳田球一や慶応大学出身の野坂参三が率いていた日本共産党(主流派、所感派)は昭和26年に武装闘争の方針を決めた。これが、札幌での白鳥一雄警部射殺事件(27年)、新宿駅前火炎瓶騒擾(そうじょう)事件(同)などのテロ、暴力的な破壊活動につながった。
 共産党は白鳥事件の冤罪(えんざい)を主張したが、共産党札幌市委員会委員長の懲役刑が最高裁で確定している。この事件で殺人幇助(ほうじょ)で有罪となった元北海道大生は平成24年に講演し、「政治テロ」だったとして謝罪している。
 白鳥事件の捜査に関連して、警察庁は、北大の理学部の地下室から武器の製造研究に使われた火薬類や試験管、軍事方針のパンフレットが見つかったことを明らかにしている。
 共産党に飽き足らない「マルクス主義者」らは、極左暴力集団(過激派)をつくった。彼らは国内外で数多(あまた)のテロや暴力事件を起こしたが、高学歴者が多く含まれていた。大学は「信者」の有力な供給源だった。
 「真理の探究」をめぐり、大学が共産主義やオウム真理教に敗れたようなもので、実に皮肉な話だ。国民がテロや暴力事件を支持しなかったことが日本を支えてきたのである。