【主張】貿易戦争 首相は米中の独善戒めよ - 産経ニュース

【主張】貿易戦争 首相は米中の独善戒めよ

 世界経済を揺るがす重大な事態である。
 米国が、中国の知的財産侵害に対して高関税を課す制裁を発動した。中国も米製品に対抗関税をかけた。さらに報復が連鎖する恐れもあり、貿易戦争の様相である。
 企業が国境を超えて生産網を築くグローバル化が進んでいる。米中衝突は両国経済を疲弊させるだけでなく、双方と密接につながる日本企業の活動にも多大な影響を及ぼそう。米中間の勝ち負けでは済まないリスクの広がりを懸念する。
 恫喝(どうかつ)的に貿易紛争を仕掛けるトランプ政権の手法が危ういのは言うまでもない。だが、米国が照準を合わせる中国の不公正な貿易慣行や産業政策にも、厳しい目を向けないわけにはいかない。
 外国企業に技術移転を強要したり、サイバー攻撃で技術を窃取したりする。国内企業は巨額補助金で優遇し、軍事とつながる先端技術の国産化を狙う。米国をしのぐ製造強国は中国の国家目標だ。
 従来は日米欧から批判を浴びても改めようとはしなかった。もはや、そこに真摯(しんし)に向き合わない限り、米国との根源的な対立は解消できない。その現実を直視するよう日本は中国を戒めるべきだ。
 米中衝突は覇権争いの表れである。本来、米国は日欧と連携して対中包囲網を強めるのが筋だ。最近は欧州やアジアでも中国の経済覇権に対する警戒感が強まっている。米国はそれを追い風とすべきなのに、逆に孤立している。
 米国による鉄鋼輸入制限は欧州連合(EU)やカナダなどの対抗措置を招いた。米国は自動車への追加関税も検討中だ。対中で結束すべき同盟国さえ標的にする米国の姿勢は極めて問題である。
 トランプ大統領が独善的な外交をにわかに転換するとは考えにくい。だが、日本としては同盟国まで敵に回す姿勢を改めるよう粘り強く訴えるほかない。米国が孤立を深めれば、その分、中国は各国と連携を強めよう。安倍晋三首相は、それが米国の影響力を低下させる無意味さを説くべきだ。
 日米欧は、技術流出を伴う中国からの投資に歯止めをかける規制強化策や、中国によるデジタル情報の国家管理に対抗するルール作りなどで協力すべき分野が多い。世界貿易機関(WTO)の改革で歩調を合わせることも必要だ。その意義を米国にどう認識させられるかが問われよう。