米国務長官の訪朝 まだ何も進んではいない

主張

 米国のポンペオ国務長官が、米朝首脳会談後初めて訪朝する。首脳会談で合意した「完全な非核化」の具体的な手順を決められるかが焦点だ。

 トランプ米大統領は金正恩朝鮮労働党委員長との会談を「大成功」と自賛しているが、核・弾道ミサイル廃棄への手続きは何も進んでいない。

 それどころか、衛星画像が伝えるのは、北朝鮮が依然、核・ミサイル開発を継続している事実である。北朝鮮の脅威は一向に減じていないと認識すべきだ。

 米研究機関などの分析によれば、北西部寧辺の核施設の建物が改修中で、ウラン濃縮工場も稼働している。北東部咸興のミサイル部品製造工場では、拡張工事が進められているという。

 北朝鮮はこれまで、米国などと交わした「非核化」の約束をことごとくほごにしてきた。楽観は厳に戒めなければならない。

 警戒すべきは、米朝会談の「大成功」を理由に、中国などが制裁を緩めようとしていることだ。

 国連安全保障理事会で、中国とロシアは米朝会談の「完全な非核化」合意を歓迎し、対北制裁緩和を求める声明案を配布していたことが明らかになった。

 安保理決議が求めているのは、核を含む大量破壊兵器とあらゆる弾道ミサイルの廃棄であり、それが実現されない限り、制裁の緩和は認められない。米国が声明案を拒否したのは当然だ。

 韓国や中国が、経済協力に積極的であるのもおかしい。米朝会談後、訪中した金委員長に中国は農業研究施設を見せた。韓国は南北鉄道連結などの協議を進めている。北朝鮮との経済協力の多くは制裁解除が前提である。前のめりというほかない。

 北朝鮮が核・ミサイル開発の時間稼ぎをしつつ、見返りを得る事態となれば、失敗した過去の核交渉と変わらない。

 核実験場の爆破などに目を奪われてはならない。ポンペオ氏は金委員長に迫って、核弾頭やミサイルの国外搬出などの具体的計画を早急にまとめてもらいたい。

 現状は制裁や警戒を緩めてはならない局面である。北朝鮮の弄する言葉だけの「非核化」は、ミサイル防衛の充実やミサイル避難訓練を見直す理由にも値しない。

 現実を見据えて、日本は不測の事態への備えを欠かしてはならないのである。