RCEP 前のめり交渉は許されぬ

主張

 日本や中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の閣僚会合が東京で開かれ、年内の大筋合意を目指すことで一致した。

 共同声明は、保護主義や管理貿易の手法を強める米国を念頭に、貿易摩擦がもたらす「深刻な危機」への懸念を表明した。

 期限を明確に定めて交渉を加速し、新たな自由貿易の枠組みをアジアに構築する。それによりトランプ政権の自国第一主義の広がりを阻む狙いがある。各国がその認識を共有したといえる。

 停滞気味の交渉を動かしたいのだろう。だが同時に、前のめりに合意へと突き進むことの危うさも認識しておく必要がある。

 日本は従来、早期妥結に必ずしもこだわらず、高水準の自由化を最優先に求めてきた。不透明で恣意(しい)的な中国の貿易秩序を排し、ルールに基づく自由で公正な通商圏をアジアに広げるためだ。

 それなのに共同議長を務めた今回は、早期妥結を重視する姿勢が鮮明になったように映る。今後、中国の動きにたがをはめることは可能なのだろうか。

 合意を急ぐあまり、中国と中途半端な歩み寄りを図るべきではない。関税の撤廃や削減はもとより、知的財産保護や電子商取引などのルールでも中国に厳しく改善を迫る姿勢を貫いてほしい。

 RCEP交渉を難しくしているのは、自由化水準などをめぐる根深い対立である。日本やオーストラリア、ニュージーランドが質の高さを追求する一方、中国やインドなどはこれに慎重である。

 16カ国の中にはミャンマーやカンボジアなど発展の遅れた国があり、先進国と同様のルールを求めるのは現実的ではない。その点での配慮は当然としても、世界2位の経済大国である中国を同列にすることはできない。

 中国は経済、軍事面で勢力圏を広げる覇権主義的傾向を強めている。そこにどう対峙(たいじ)するかは、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)にも共通する課題である。

 中国には、米国との貿易摩擦を打開するため日本と連携を強めたい思惑もある。そのためRCEP交渉で一定の歩み寄りをみせる場面もあろう。だが、中国の不公正な貿易慣行を断固として認めないのが原点である。これを温存させるような交渉は論外である。