がんの見落とし 画像診断の「価値」共有を

主張

 がんの画像診断の情報が病院内で共有されず、治療が手遅れになるミスが相次いでいる。

 救えるはずの命が救えなかったことを、関係者は猛省すべきだ。他の医療機関でも、同様の事態が起きていないか検証してもらいたい。

 千葉大病院では、患者9人のコンピューター断層撮影装置(CT)の画像診断でがんの所見などが見落とされた。主治医が自身の専門領域に集中し、画像診断で指摘された専門外の所見の確認が不十分だった。

 横浜市大の病院では、心臓治療のためのCT検査で、画像診断医が腎臓のがんを発見し、報告書に記載した。だが、主治医には連絡せず、主治医も報告書の存在に気づかなかったという。

 命をあずかる仕事である。連絡を取り、声を掛け合う慣行が医療現場にはないというのだろうか。これでは、報告書は紙切れになってしまう。

 予期せぬ重大な結果が見つかったら、画像診断医が主治医に直接連絡し、注意喚起するのが基本である。最近は、主治医が画像を未読にしていると、警告が出るシステムもある。積極的に利用してもらいたい。

 画像診断の現場では検査件数も1件当たりの読むべき画像数も増えたという。一方で画像診断の専門医らの態勢は十分ではない。

 生命にかかわる画像診断の価値を、いかに医療現場で共有するかが根本的な問題といえよう。

 医療事故情報を収集する「日本医療機能評価機構」によると、類似のミスは昨年までの3年間で47件に上った。見落とされた所見の大半が、当初の検査目的以外の場所で見つかっていた。

 画像診断医がいない病院もある。各専門診療科の医師には「専門分野の画像診断は、自分でできる」との自負もあろう。

 だが画像の専門医と協力することで、見えなかったものが見えることがある。それを今回の事故は示している。

 医療技術の進歩に見合う質の高い医療が提供できているか、顧みてもらいたい。

 がん治療はチーム医療だ。進行の度合いによって治療法が違う。薬剤の副作用に対する管理も必要で、臓器別のアプローチでは対応できない。画像の診断の情報共有に加え、診療科や専門職を超えた治療の連携を再点検すべきだ。