働き方改革法 残業代削減の還元考えよ

主張

 安倍晋三政権が今国会の最重要法案としてきた「働き方改革関連法」が成立した。

 長時間残業の是正や正社員と非正規社員の待遇格差の解消、高所得の一部職種を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の創設が柱だ。

 労働者の心身の健康を守る上で残業時間に罰則付きで上限を設ける意義は大きい。ただ、残業が減ればその分、収入は減少する。従業員に対する還元策も同時に考えるべきである。

 働き方が多様化する中で、一部の専門職を対象に仕事の成果で賃金を支払う高プロは、労働生産性の向上に資する制度と位置づけられる。柔軟な働き方を促す選択肢としたい。

 働き方を大きく変えるものだけに、政府は産業界への周知徹底を図り、働く現場で混乱が起きないようにしてもらいたい。

 残業規制の導入は、日本の労働法制で初めてとなる。現在は労使で協定などを結べば事実上、青天井で残業時間を延ばせる。これを年720時間までに制限する。

 違反すれば企業に罰金などを科す。大企業は来年4月、中小企業には2020年4月の導入だ。

 各企業が順守するためには、業務を効率化し、無駄な残業を排する取り組みが不可欠だ。必要に応じて、労働者を増やす対策なども求められよう。

 それ以上に、残業規制による残業代の減少への目配りは欠かせない。減少分は産業界全体で5兆円に上るという試算もある。

 収入の目減り分をそのままにすれば日本経済に悪影響を与える。それを避けるには、浮いた人件費を従業員に再配分する仕組みが求められる。ボーナスによる還元などの制度設計を急ぐべきだ。

 高プロは、年収1075万円以上の金融ディーラーやコンサルタントなど高度専門人材を対象とする。立憲民主党などは「過労死を招く」などと反対した。本人同意が適用の条件とされ、年104日の休日取得も義務化した。

 国会審議を通じ、高プロの対象者となった後でも、本人の希望で元の雇用条件に戻れるようにした。現実的な修正といえよう。

 仕事の多様化に伴い、労働時間で賃金を決める方式が合わない職種も増えている。国民の懸念を払拭しつつ、高プロに幅広い理解を得る努力が欠かせない。