【産経抄】6月28日 - 産経ニュース

【産経抄】6月28日

 竜宮城はどこにあるのか。室町時代に成立した御伽草子(おとぎぞうし)「浦島太郎」によれば、現在の京都府の一部である丹後国(たんごのくに)の沖合だった。助けた亀の化身である美しい女房に導かれ、「十日余りの船路」の果てにたどり着く。
 ▼竜宮城にちなんで名付けられた小惑星「リュウグウ」は、地球から約3億キロも離れた宇宙のかなたにある。3年半前に地球を旅立った探査機「はやぶさ2」は太陽の周りを回りながら約32億キロもの旅を経て、きのう到着した。
 ▼浦島太郎は竜宮城で3年間、女房と仲むつまじく楽しく暮らす。はやぶさ2はリュウグウに約1年半滞在して、計3回着陸を試みる。表面や内部の鉱物標本を採取して、2020年末に地球に持ち帰る予定だ。
 ▼はやぶさ2は、小惑星イトカワからサンプルを採取して、10年に地球に帰還した「はやぶさ」の後継機である。イトカワは岩石ばかりでできた小惑星だった。これに対してリュウグウには、生命の材料である有機物や水を含んだ鉱物が、存在するとみられている。
 ▼そもそも「水の惑星」と呼ばれる地球の水は、どこからもたらされたのか。先月のコラムで、遠い宇宙から飛来した小惑星が運んできた、との説が有力らしい、と書いた。リュウグウの鉱物を調べれば、その説が検証できるかもしれない。
 ▼浦島太郎の竜宮城への旅は、実は宇宙旅行だった、との“説”がある。故郷に帰ってみると、数百年が過ぎていた。これは、高速のロケットのなかでは時間がゆっくり流れるという、アインシュタインの理論で説明できるからだ。ところが、竜宮城で土産にもらった玉手箱を開けてみると…。はやぶさ2が持ち帰る玉手箱の中身は何だろう。地球の生命誕生の謎を解く、手がかりだったらいい。