【主張】児童虐待 支援渋る実態を直視せよ - 産経ニュース

【主張】児童虐待 支援渋る実態を直視せよ

 児童虐待の報道が流れるたびに胸を痛め、再発防止を誓う。それを何度繰り返してきたか。長らく、子供を救うための十分な人や金を投じてこなかった。その現実を国は直視すべきである。
 東京都目黒区で5歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃんが死亡し、保護責任者遺棄致死容疑で両親が逮捕された。政府は事件を受けて再発防止の関係閣僚会議を開いた。7月中に児童相談所(児相)の体制強化など、抜本的対策をまとめる。
 この事件では、転出元の香川県の児相から転入先の東京都の児相に、過去の経緯を含めた引き継ぎがあったが、情報を生かせなかった。転居時のルールに従っても児相の対応には温度差がある。結愛ちゃんの場合、警察との情報共有も機能しなかった。
 虐待は網の目を細かくしないと防げない。児相の案件を警察と共有する都道府県が増えている。高知県、愛知県などは全件を共有している。親との信頼関係を構築できないとして、これに消極的な意見もある。だが、子供の命を守りきれていない実態を放置することはできない。
 児相が対応した児童虐待の相談は、平成11年度に1万1631件だったのが、27年度には10万3286件へと約9倍に増えた。これに見合う体制となっていない。児相の数は174カ所から208カ所と2割しか増えず、児童福祉司も1230人だったのが2934人と2・4倍どまりだからだ。
 児童福祉法改正で、都道府県に加えて中核市や特別区でも児相を設置できる。だが財政や人繰りなどもあり数が増えない。専門職拡充も決まったが、一朝一夕には育成できない。これまで充実を後回しにしてきたツケが来ている。
 保護された子供が置かれる環境も厳しい。海外では、小規模のグループホームで養育する時代を経て、今は里親委託が主流だ。日本ではいまだに多くの子供が大規模施設での集団処遇である。人も金も社会の理解も不十分なまま、保護や養育は関係者の熱意と献身に任せている。
 日本社会事業大学の調査によると、日本が社会的養護にかける費用は国内総生産(GDP)比でわずか0・02%である。ドイツは1桁多く、米ワシントン州は2桁多い。親の庇護(ひご)を受けられない子供を社会的に支援する。それを渋ることがあってはならない。