【主張】漁業権 資源回復に資する改革を - 産経ニュース

【主張】漁業権 資源回復に資する改革を

 水産業の強化に向けた改革がようやく動き出した。政府が漁業権の見直しなどを柱とする水産業活性化策をまとめ、経済財政運営の指針「骨太方針」に盛り込んだ。
 四方を海に囲まれながら、漁獲量の減少や後継者不足などによる水産業の停滞が指摘されて久しい。流通を含む産業としての生産性を高め、同時に水産資源の回復や管理に資する改革としてほしい。
 政府は地方自治体や漁業関係者らへの政策説明会も始めた。政策の効果を高めるためにも、議論を深めて具体化を図るべきだ。
 焦点は、漁業権の優先順位の廃止を打ち出したことである。養殖業を念頭に企業参入を促す狙いがある。
 沿岸水域で一定期間、排他的に漁業を営めるのが漁業権だ。これまでは地域の漁業者や漁業協同組合がこれを独占してきた。多様な参入を阻み、沿岸漁業や養殖業の停滞の一因とされる。
 今回の改革では、まず有効活用されていない漁場を洗い出し、新たな海区と位置づける。その上で、漁業権を付与する従来の優先順位をなくし、新たに都道府県が海区漁業調整委員会の意見に基づいて判断する流れとする。
 ただし、漁場が「適切かつ有効」に活用されている場合は、従来の漁業権所有者に継続利用を認める。
 漁業権を付与する仕組み自体は残す改革である。韓国は漁業権の廃止にまで踏み込んで養殖業の生産量を増やした。水産業の強化にどうつながるかを不断に検証する作業が欠かせない。
 そのためにも、海区漁業調整委員会の委員構成は地域漁業関係者ばかりとせず、多様な意見を取り入れる組織とすべきである。
 養殖は海洋資源保護の観点からも重要だ。水産物輸出の中心となることも期待されるが、平成6年の134万トンをピークに29年はついに99万トンと大台を割った。反転させられるか。
 他方、やみくもに企業参入を促すことには懸念もある。儲(もう)からなければ撤退するのではないか。企業が売れる魚ばかりを養殖すれば、多種多様な魚種を誇る日本の漁業の良さが失われかねない。
 水産資源は国民共有の財産である。その基本を見失わず、水産業の持続的な発展を実現できるかどうかが問われている。