【産経抄】6月22日 - 産経ニュース

【産経抄】6月22日

 芥川賞作家の絲山(いとやま)秋子さんは、2007年の夏、西アフリカのセネガルに2カ月間滞在している。子供の頃から大ファンだった打楽器奏者ドゥドゥ・ンジャエ・ローズの故郷が見たい。それが旅の目的だった。
 ▼首都ダカールでホテル住まいをしているうちに、どんどん友達が増えていく。毎日誰かの家で食事をごちそうになる。2人の奥さんがいる男友達からは、「俺の第3夫人にならないか」と誘われた。自分の良さについて「第1夫人に聞いてみろ。彼女が保証する」。
 ▼セネガル人はエッチなジョークが大好きだ。しかもそれが少しも下品でない。民族衣装を身につけたまま、友達に別れを告げた絲山さんは、泣きながら帰国の途につく。夢のようにすぎた日々は、紀行エッセー『北緯14度』にまとめられた。
 ▼それまでなじみのなかった国への興味が、にわかに湧いてくる。サッカーワールドカップ(W杯)の楽しみの一つである。ロシア大会1次リーグで日本代表が次に戦うセネガルは、「パリ-ダカール・ラリー」の舞台として知られてきた。「テランガの国」という愛称も持つ。テランガは現地の言葉で、「もてなし」の意味だ。
 ▼初戦で日本代表が格上のコロンビアからもぎとった金星は、世界を驚かせた。セネガルもまた、ランキング上位のポーランドを下して勢いに乗っている。02年の日韓大会では、初出場ながらベスト8まで進んだ。かつての宗主国であり、前回大会で優勝しているフランスを1-0で撃破した開幕戦は、W杯史上に残る番狂わせとして記憶に残る。
 ▼決勝トーナメント進出をかけた大一番は、日本時間の25日午前0時に始まる。「半端ない」ゴールが再び見られれば、寝不足はまったく気にならない。