【主張】米中貿易戦争 これで覇権を阻めるのか - 産経ニュース

【主張】米中貿易戦争 これで覇権を阻めるのか

 トランプ米政権が、知的財産権侵害を理由に中国製品に対する制裁関税を発動すると発表し、中国側も即座に報復関税の実施を表明した。
 世界1、2位の経済大国による貿易戦争の懸念が一気に高まった。
 報復の連鎖は、両国経済を悪化させるだけでなく、世界経済にも多大な悪影響を及ぼす。極めて憂慮すべき事態である。
 ただし、米国による対中攻勢の本質は次世代の産業や軍事力の基盤となるデジタル技術をめぐる中国の覇権拡大を阻むことにある。冷静にみるべき点である。
 米国の措置は世界貿易機関(WTO)のルールに違反する恐れがある。日本や欧州などの同盟国に対しても、鉄鋼などで保護主義的な輸入制限をかけている。恫喝(どうかつ)的措置を乱発する手法は危うい。
 日欧と連携して中国の不公正な貿易慣行に対峙(たいじ)するのが本来の姿である。日欧と亀裂を深める孤立主義がこれに逆行することを、米国にはもっと厳しく認識してもらいたい。
 米側の制裁対象は中国が重点分野とするハイテク製品が大半である。中国は、国家戦略「中国製造2025」を掲げて国内産業を保護してきた。外国企業に技術移転を強要したり、自国産業に不当な補助金を投入して優遇したりするほか、サイバー技術を巧みに使う情報窃取も後を絶たない。
 デジタル覇権の確立と併せて広域経済圏構想「一帯一路」による勢力圏拡大を図る権威主義的な体制を、国際社会に広げようとする既存秩序への挑戦だ。
 この点では日欧も危機感を共有する。中国が今の路線を抜本的に改めるべきは当然である。
 問題は、日欧と対立してまで米国がなりふり構わず動くことにより、本当に中国の覇権主義をとどめられるかどうかだ。
 トランプ政権は、目先の貿易赤字削減に拘泥する。中国が米国製品の輸入拡大や対米輸出の削減で踏み込んだ提案をしたとき、取引(ディール)と称して、これをのむことは十分に想定できる。
 米国が制裁関税を発動するのは7月6日である。米中両国は全面的な貿易戦争の回避に向けて交渉するとみられる。
 だが、取引により中国の強国路線に時間を与えるようでは元も子もない。むしろその覇権主義を助長しかねないことを懸念する。