参院選改革案 国民の理解得られるのか

主張

 与党の辞書には「身を切る改革」という言葉がないのだろうか。自民が国会へ提出した、参院定数を6増やす公職選挙法改正案のことである。野党は反発し、公明は採決で賛成する見通しだ。

 平成28年参院選で最大3・08倍だった格差を3倍以内に収めるため、議員1人当たりの有権者が最多の埼玉選挙区の定数を2増やす。その分を比例代表で減じるならまだしも、比例代表も定数を4増やすとは、どこから理屈が出てくるのか。

 比例代表の定数増は、事前に定めた順位によって優先的に当選者を決める、拘束名簿方式の「特定枠」導入に充てる。

 自民には、選挙区の「鳥取・島根」と「徳島・高知」の合区を維持する代わりに、候補者を出せなかった県の候補を特定枠で優遇し、議員の空白県をなくすねらいがある。

 地方議会が定数減の努力をしているのに、国政では臆面もなくお手盛りの定数増をはかる話だ。参院の選挙制度が複雑になり過ぎる。抜本改革の名に値せず、極めて疑問である。

 27年の公選法改正の際、来年の参院選に向けて「選挙制度の抜本的見直しについて必ず結論を得る」と付則に明記したことを忘れたのか。

 自民の一部には「国民にどう映るか心配だ。なめてはいけない」(小泉進次郎筆頭副幹事長)と懸念の声があった。だが結局、与野党協議に持ち出し、反発する野党との議論もそこそこに、国会へ提出した。

 自民案の根本的問題点は、人口減少に拍車がかかることへの認識が足りないことだ。今の47都道府県の枠組み自体が持ちこたえられなくなりつつある。合区の存在がそれを示しているのに、国会が47都道府県の枠組みにこだわっていては、人口減少に備えた国や社会の抜本的な改革など望めない。

 自民は「一票の価値の平等」を人口に限定せず、47都道府県すべてに参院選挙区の定数を置く憲法改正も目指している。これも人口減少から目をそらす発想だ。

 自民案に反発するだけの野党にも大きな問題がある。抜本改革案を提示せず、ただ反対しているだけでは責任ある政党からはほど遠い。与野党ともこの体たらくでは、参院不要論を加速させるだけだろう。