【清水満のスポーツ茶論】王貞治さん…輝き続ける『終わらない人』 - 産経ニュース

【清水満のスポーツ茶論】王貞治さん…輝き続ける『終わらない人』

 一般女性と結婚したソフトバンクの王貞治球団会長=1日、福岡市のヤフオクドーム
 先週、話題の映画『終わった人』(全国東映系公開中)を見た。「定年って生前葬だな…」。こんな衝撃的な書き出しで始まる内館牧子さんのベストセラー小説の映画化である。
 仕事一筋で定年を迎えたサラリーマンの悲哀を描いている。定年翌日から「やることがない…」と途方に暮れながらも、その先を求めて奮闘するシーン。拙稿も主人公と同年代、グサッと胸に刺さった。
 いまや4人に1人が65歳以上となる超高齢者社会である。日本が抱える課題としては深刻だ。とはいえ、人間、簡単には終われない。“そこから”どう生きていくかであろう。
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 いまなお輝き続けて『終わらない人』だっている。王貞治さん(ソフトバンク・ホークス球団会長)、78歳。つい先日、再婚を発表した。その直後、会う機会があった。
 「この度は、本当におめでとうございます」
 「いやいや、ま、ありがとう。(存在は)知ってたよね。ケジメだね」
 ちょっと照れたが、誠実な姿があった。今年、宮崎キャンプを訪ねたときもそうだったが、以前から会話の端々に「…女房がね」とも口にしていた。
 「10年以上の付き合いになるからね。(2006年、がんで)入院したときも、ずっと身の回りの世話をしてもらってた。男は一人じゃどうしようもない。とくに僕は野球以外のことは全然ダメ。(結婚は)こだわってなかったけど、この年になると、お互いの力を必要とするから、そういう形を取った方がいいと思ってね」
 がんで入院する前には80キロ以上あった体重は60キロ台に。2年前の11月、巨人OB戦で台湾遠征から帰国後に体調を崩して入院…。今年も年明け早々、インフルエンザに侵されたが、「いまは太れないけど、体調はいいよ」と。元気である。17歳年下の奥さんの内助の功である気がした。
 だから球団会長として常勝軍団を支えるだけではなく、ライフワークの野球普及活動にも心血を注げる。
 1990年から王さんの旗振りで始めた『世界少年野球大会』は今年で28回目を迎え、8月に島根・松江で開催される。これまで今年を含めて97の国と地域、約5700人の子供たちを招待してきた。費用は企業や団体、個人の寄付。王さんの“顔”で集めた。
 「僕はずっと人に支えられてきたから、いまは自分のことより、人のために何ができるか、だよね」
 こんな思考でいるから人がついてくる。現役時代は世界の本塁打王に、指揮官として巨人、ホークスで栄光をつくり、ワールド・ベースボール・クラシックで世界一(2006年)になった。ずっと輝き続けている。『終わらない人』なのである。
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 映画『終わった人』の主人公は? 一念発起してスポーツジムに通い、カルチャースクールでは受付嬢にほのかな恋心を抱き、やっと就いた仕事ではまさかの…。予想だにしない出来事が次々に襲いかかる。そしてラストを迎える。
 そういえば、王さんはこうも言っていた。
 「僕は“七転び八起き”っていう言葉が大好きなんだ」と。以前から「現役時代から、ずっと挫折が先だった。とにかく挑戦しなけりゃ始まらない。そうすれば必ず次もあるんだ」。
 なるほど。王さんの言葉を借りれば「終わった人」だって「終わらない人」になれる。己(おれ)も頑張るか…。