日大「失敗の本質」 甘い想定、逆ギレ会見、逃げた?トップ… 論説委員・鹿間孝一

日曜に書く
日大・田中英寿理事長 

 日本大学は大きな誤りを犯した。

 関西学院大とのアメリカンフットボールの定期戦での悪質な反則タックルは、スポーツを汚す行為だが、それだけではない。事後の対応があまりにお粗末だった。

 近年、企業の不祥事が相次ぎ、コンプライアンス(法令順守)や危機管理の重要性が叫ばれている。しかも日大には危機管理学部があるというのに、どうしたことか。

 3つの観点から「失敗の本質」に迫りたい。

 ◆最悪を想定せよ

 危機管理の要諦は、まずは最悪の事態を想定して、そうならないためにはどうしたらいいかを考えることである。だが、とかく大事(おおごと)にはならないだろうと楽観しがちである。日大もそうだった。

 反則タックルが監督や担当コーチ(いずれも辞任)の指示だったのでは、と取り沙汰されているのに、「指導と選手の受け取り方に乖離(かいり)があったのが問題の本質」という説明をした。誤解した選手が悪いというニュアンスだ。

 事実を隠蔽(いんぺい)しない、うそをつかない、責任を転嫁しない-も危機管理の基本である。

 日大アメフット部において監督は絶対的な存在で、選手は反抗できない。だから前述の説明で乗り切れると思ったのだろうが、甘かった。

 反則タックルをした選手が記者会見して、指示の内容を詳細に明らかにしたことで、一気に風向きが変わった。「そうでなければ謝罪にならない」と顔を出したのも、同情と好感を呼んだ。

 ◆会見で火に油

 翌日に前監督とコーチが会見して、改めて反則指示を否定したが、選手とどちらが信じられるかは言わずもがなである。

 危機対応にはスピードが求められる。放っておけば火は燃えさかる。なのに日大は、火を消すどころか、油を注いでしまった。

 まず関学大への謝罪も、質問状への回答も遅かった。加えて謝罪に訪れた前監督は、ピンクのネクタイで、大学名の「かん(くわん)せいがくいん」を「かんさいがくいん」と言い間違えた。ピンクは日大を象徴するカラーらしいが、ふさわしくない。誰もアドバイスしなかったのだろうか。

 危機管理において、謝罪の記者会見は極めて重要である。事前に想定問答をつくり、リハーサルをする。服装は地味なスーツか業種によっては作業服で、派手な色や柄のネクタイは避ける。頭の下げ方にも注意する。

 ところが、前監督らの会見は準備不足で、うまく切り回すべき広報部職員の司会者が目立ってしまった。

 同じ質問が繰り返されているとして、声を荒らげて何度も会見を打ち切ろうとし、「あなたのせいで日大のブランドが落ちますよ」と指摘されると、「落ちません!」。

 「私は寝てないんだ」と言った食品会社の社長や、息子に耳打ちする高級料亭の女将(おかみ)を思い出すが、誠意を示すべき会見で逆ギレは最悪である。

 かつて橋下徹前大阪市長は、時間無制限、どんな質問にも答えると深夜まで会見した。

 ◆逃げた?トップ

 危機管理はトップが責任をもって対応しなければならない。

 平素から悪い情報が迅速に上がってくる体制を整備し、損失は覚悟の上で、二次被害、損失の拡大防止に全力を尽くす。なによりトラブル時に、トップは逃げないことが大切だ。

 日大のトップである田中英寿(ひでとし)理事長は、問題が発覚して以降、一度も会見していない。学内の会合は別にして、公には謝罪も自らの責任への言及もない。これでは逃げていると思われても仕方あるまい。

 日大は弁護士7人からなる第三者委員会を設置した。関係者から聞き取り調査などを行い、7月下旬に結果を報告するという。

 すでに関東学生アメリカンフットボール連盟は、監督とコーチが反則行為を指示したと認定し、処分を下している。いまさら何を調査し、どんな報告をまとめるというのか。これも後手に回った。

 日大のイメージは失墜した。学生の就職活動や入試にも影響が出そうだ。まれに見る危機管理の失敗例といえよう。

 第三者委を設けるなら、こちらを検証してはどうか。危機管理学部の貴重な教材になるはずだから。(しかま こういち)