人を見下した都合のいい「脱台者」呼ばわり 気になる圧政から逃れたい「脱中者」

上海余話
昨年10月の中国共産党大会に台湾代表として参加した廬麗安さん=北京の人民大会堂(共同)

 中国で「脱台者」なる造語が話題になっている。

 独裁政権の圧政が続く北朝鮮から、命からがら脱出して韓国などに亡命した「脱北者」をもじって、留学や就業などで中国大陸に生活の場を移した台湾出身者を指すという。英BBCの中国語版記事が発信源だ。

 かつて経済パワーで台湾の後塵(こうじん)を拝していた中国だが、今や立場は逆転。「台湾同胞も強国中国に憧れる時代がきた」と受け止めたメディアが飛びついた。

 北京で昨年10月に開かれた中国共産党大会に、「台湾代表」として参加した女性の廬麗安さんを、中国メディアは「脱台者」代表のように扱い始めた。廬さんは台湾の高雄生まれ。共産党員となり、上海の復旦大学で教職に就いている。

 100万人以上の台湾出身者が中国で暮らしているが、民主社会の台湾に独裁も圧政もなく、人生のチャンスを求めた自由な移動に他ならない。それを「脱台者」呼ばわりとは、人を見下した悪意ある言葉遊びと言わざるを得ない。「台湾は中国の一部だ」との政治的な主張も背後にある。

 29年前の6月に起きた天安門事件を挙げるまでもない。独裁と圧政が続くのはいったいどの国か。むしろこの国から逃れたい潜在的な“脱中者”の存在こそ気がかりだ。(河崎真澄)