財政健全化計画 黒字化への覚悟伝わらぬ

主張

 安倍晋三政権はどこまで腰を据えて財政を立て直すつもりか。その覚悟が伝わってこない。

 経済財政諮問会議に示された「骨太方針」の原案にある、新たな経済・財政再生計画は、基礎的財政収支(PB)の黒字化目標を5年先送りし、2025年度にすることなどを柱としている。

 だが、目標設定には甘さが目立ち、むしろ財政規律が緩む懸念が先に立つ。首相は財政再建と経済再生の両立を掲げてきた。それが果たされていない現実を、もっと重く受け止めるべきだ。

 首相は昨秋、消費税増税の使途を変えて教育無償化などに充てることを決め、20年度黒字化という従来目標を撤回した。それを踏まえて今回の計画が策定された。

 25年度には団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護費が一段と膨らむ。新目標はその時期と重なる。24年度達成も視野に入るというが、景気低迷などに備えて25年度にした。遅くともそれまでに実現するという年限と捉えるべきで、より早く黒字化する改革が必要である。

 懸念すべきは、名目3%を上回る高めの成長率が黒字化の前提になっている点だ。成長は税収増に欠かせないが期待通りに運ぶとは限らない。20年度の黒字化断念も期待ほど成長しなかったのが一因だ。その繰り返しでは今度も目標先送りを生む。成長に伴う税収増は慎重にみるべきである。

 19~21年度を基盤強化期間として社会保障改革などに重点的に取り組む。PBと債務残高、財政収支の3つに中間目標も設けた。

 多様な指標で進捗(しんちょく)を検証することには意味がある。だが、内閣府の中長期試算では、新たな改革を講じなくても、今回の計画で掲げた債務残高と財政収支の目標を達成できる見通しである。身を切る改革への意志は弱い。

 社会保障費などの伸びを抑制する「目安」の数値は盛り込まなかった。旧計画では社会保障費増加額を16~18年度の3年で1・5兆円程度にすると明示し、成果を挙げた。今回も高齢化相当分に抑える方針は踏襲したが、数字なしで実効性を担保できるだろうか。

 財政に余裕を持たせておかなければ、震災や景気悪化時に機動的な動きは難しくなる。安全保障環境が厳しさを増す中、真に必要な防衛予算も捻出できない。いずれも忘れてはならない視点だ。