「あすの会」解散 課題は社会全体で継承を

主張

 犯罪被害者や遺族らで作る「全国犯罪被害者の会(あすの会)」が、18年余の活動を経て解散した。被害者の権利を明記した犯罪被害者等基本法の成立など所期の目的を果たしたことや、会員の高齢化が主な理由だ。

 あすの会の顧問で、被害者遺族でもある岡村勲弁護士は今後の対策について「国や国民が考えてほしい」と述べた。課題は、社会全体でしっかりと引き継ぎたい。

 あすの会が声をあげるまで、犯罪被害者は社会から疎外されていた。裁判では「被害者の権利」は顧みられなかった。捜査記録の閲覧は許されず、法廷では傍聴席すら用意されなかった。

 刑事裁判は「公の秩序維持のため」、裁判官、被告・弁護人、検察の3者だけで行われるものとされていた。加害者の人権は厚く保護されながら、被害者は「証拠のひとつ」でしかなかった。

 「事件の当事者は裁判の当事者でもあるべきだ」と主張し、被害者の裁判参加などを求めるあすの会の前に立ちはだかったのは、裁判官、弁護士、法学者ら法律の専門家だった。「被害者が参加すれば裁判は応報的になり、法廷が荒れる」と拒否し続けた。

 しかし専門家ではない、普通の国民が彼らを後押しした。地下鉄サリン事件や神戸児童連続殺傷事件などの無差別殺傷事件を契機に「あすは自分が被害者になるかもしれない」との認識は、社会に広く浸透していった。

 「新たな被害者に自分たちのような思いはさせたくない」「亡くなった家族の無念さに報いたい」と心身を削って活動を続けるあすの会に、多くの国民が共感し、国会を動かした。

 平成16年に基本法が成立、20年に被害者参加制度が導入された。被害者は裁判の当事者になった。制度を利用した被害者遺族らは28年までに8600人を数える。ある強盗殺人事件の遺族は「心が回復するきっかけになった。参加制度に救われた」と語った。

 刑事裁判のあり方を変えた、あすの会の足跡は大きい。だが、被害者への補償は一時金程度のもので、会が求めた生活保障型にはなっていない。適用対象から外れ、法や制度に救われない被害者も多くいる。問題の解決を、いつまでも会の熱意に頼るわけにはいかない。課題は社会の一人一人が担うものと受け止めたい。