【別府育郎のスポーツ茶論】「結果次第で手のひら返し」のサッカー日本代表監督 - 産経ニュース

【別府育郎のスポーツ茶論】「結果次第で手のひら返し」のサッカー日本代表監督

事前合宿に向かうサッカー日本代表の西野朗監督(前列右)=2日、成田空港(福島範和撮影)
 「結果次第で評価は手のひら返し。それがサッカーの代表監督なんや。この商売は一国の首相より乱高下が激しい」。そう話してくれたのは、代表監督時代の加茂周だった。
 前任のファルカンが広島アジア大会で韓国に敗れ、在任8カ月で解任された後を受けての就任だった。
 ブラジル「黄金の4人」の1人で、ブラジル代表監督も務めたファルカンだったが、「ドーハの悲劇」の主人公、ラモス瑠偉らを排して若手の登用を急ぎ、解任の理由には「コミュニケーション不足」も挙げられた。離日の成田空港で見送ったのは代表スタッフ3人と記者1人だけ。数え切れないスーツケースを運ぶのを手伝った礼だったか、単独取材に応じてくれた。
 「ラモスはJリーグでベスト3に入る選手だが、3年後のW杯を考えると代わりを見つける必要があったんだ」。現役当時同様に背筋を伸ばし整然と話した。まだ幼かった娘が横で「ありがとう、さようなら」と日本式に、深々と頭を下げた姿が記憶に残る。
 ラモスや都並敏史、堀池巧らを復帰させてスタートした加茂代表は初陣で大敗し、世代交代を徐々に進めてチームの中心に名波浩、中田英寿らを据えた。だがW杯アジア最終予選で敗退の瀬戸際に追い込まれ、電撃的に解任された。
 監督代行に昇格した岡田武史とともにウズベキスタンに向かうチームを送り、加茂はカザフスタンに居残った4人の記者と中華料理店のテラスで赤ワインを飲んだ。「しゃあない。悔しいけど。しばらくのんびりさせてもらうよ」。そう恬淡(てんたん)としながらボトルは次々に空いたという。その後も加茂の口から解任に関する愚痴は聞いたことがない。
                  ◇
 采配をめぐる評価で解任されたのは、この2人以来である。怒りが収まらないハリルホジッチは日本記者クラブで会見を開き、未練と憤懣(ふんまん)をぶちまけた。
 パリ在住でフランス最高勲章のレジオン・ドヌールも受章しているハリルに晩節を汚させたくはなく、日仏関係に亀裂が入ってもいけない。そう配慮したフランス大使館は「止め男」役にトルシエの通訳も務めたダバディを頼んだ。
 ダバディは会見当日、ハリルの自宅で「話しすぎない、過激にならない」とクギを刺し、会見場でもハリルの正面に陣取って同様の注意を手書きのメッセージや身ぶり手ぶりで伝えたが、制御は不能だった。なるほど、この人とのコミュニケーションは難しい。そう印象づける会見となった。
                  ◇
 ハリル退陣の後を受けた西野朗は、初陣となるガーナ戦を白星で飾ることはできなかった。ハリルの呪縛が解けたようにボールは動いたが、相手ゴール前まで運ぶことは難しい。ハリル以前からの課題はそのままだった。西野の表情は心なしか青ざめてみえたが、選手の表情は比較的、明るくみえた。それが吉兆かどうかは分からない。
 オシムの急病で再び代表監督を任された岡田は、チームをほぼそのまま引き継ぎ、W杯予選のバーレーン戦に敗れると「我慢してきたこともあったが、これからは思い通りにやらせてもらう」と開き直った。
 そしてW杯南アフリカ大会で決勝トーナメントに勝ち進んだ。
 西野はロシアで戦う最終メンバーに、ハリル体制で首が涼しかった本田圭佑、香川真司、岡崎慎司の3人を頼んだ。それぞれの開き直りに、望みを託す。