6月4日

産経抄

 「山下財宝」をめぐる騒動は、いつまで続くのだろう。第二次世界大戦中に旧日本軍が戦線で奪取し、フィリピンに隠したとされる、膨大な金や通貨などを指す。名前はフィリピン戦線最後の司令官だった山下奉文(ともゆき)大将に由来する。「マレーの虎」と呼ばれた名将にとって、迷惑な話である。

 ▼ルソン島沖の南シナ海に浮かぶカポネス島で、違法な穴掘りをしていた日本人4人も、この財宝を狙っていたようだ。穴は約5メートル四方で、深さも約5メートルあった。発掘作業のためにフィリピン人を雇っていた4人は、2日までに警察に逮捕された。

 ▼マルコス元大統領が不正蓄財を疑われた際には、イメルダ夫人が「資金源は山下財宝」と言い訳に利用したものだ。政府高官が記者会見で、「財宝の一部のプラチナを発見」と発表して大騒ぎになったこともある。結局その後の調査で鉄くずと分かった。

 ▼ブルドーザーを使った発掘で古代の土器など貴重な遺跡を破壊して、地元でひんしゅくを買ったのは、日本人が指揮するグループだった。「都市伝説にすぎない」との説が有力だが、今でも一獲千金を夢見る人が後を絶たない。

 ▼敗戦とともに投降した山下は、昭和21年2月に戦犯として絞首刑に処せられる。晩年の山下は、日本の復興のためには子供の教育こそが大切と、繰り返し語っていた。「君たちが内地に上陸した時、お母さんの膝の上で抱かれてオッパイを飲んでいる赤ちゃんを大事に立派な日本人になるよう育てて欲しい」。死の直前、かつての部下に言い残したという(『山下奉文』福田和也著)。

 ▼50万人の日本人、100万人のフィリピン人が亡くなった決戦の地に渡り、欲に駆られて穴を掘るのは、立派な日本人の振る舞いとはいえない。