佐川氏を不起訴 改めて信頼の回復を図れ

主張

 公文書とは、国などの行政機関の活動の基盤となり、歴史の証しとなるものである。これを正しく取り扱うことは、民主主義の根幹を成す。改竄(かいざん)はあってはならない。不起訴処分は、何ら免罪符とはならない。

 学校法人「森友学園」との国有地取引で、大阪地検は、決裁文書を改竄したとする虚偽公文書作成罪などで告発された佐川宣寿前国税庁長官らを不起訴処分とした。

 これを受け、財務省は佐川氏が改竄に関与したと認定し、すでに国税庁長官を辞任して現職の国家公務員ではないため「懲戒処分相当」として退職金を減額し、改竄に関わった複数の理財局幹部らも処分する見通しだ。

 セクハラ問題で辞職した福田淳一前財務事務次官と同様の扱いである。先に辞職を認めたため、佐川氏も正式の懲戒対象とはならない。国会に大きな混乱を招いた代償が退職金の減額だけでは納得がいかない国民も多いだろう。

 改竄の事実はすでに動かない。その動機は、佐川氏が理財局長として行った国会答弁と整合性を取るためだった。

 佐川氏には、国会の証人喚問で「訴追の恐れ」を連発して証言を拒み続けた一つ一つの事実について、改めて説明する責任が残る。訴追の恐れが解消された以上、全ての疑問に答えるべきである。

 野党6党派の国対委員長は、佐川氏の証人喚問を再度行うよう与党に求める方針で一致した。自民党の二階俊博幹事長は「司法が判断をした以上は、それに従うのが通常だ」としてこれを拒む姿勢をみせている。

 だが、刑法上のハードルと、幹部公務員としてのそれは、おのずと異なるものである。この問題をめぐって対応を誤れば、政府・与党は再び信を失いかねない。

 安倍晋三首相はすでに、改竄問題をめぐり「行政全体の信頼を揺るがせ、行政の長として責任を痛感している。国民に深くおわびする」とし、「信頼回復に全力を挙げて取り組む」と述べている。それには真相の解明と開示、相応の処分が必要である。

 北朝鮮の非核化や拉致問題の解決など、外交の重要課題が山積している。

 いつまでも、この問題に関わってはいられない。だからこそ幕を引くための納得のいく対応が求められている。