【産経抄】5月28日 - 産経ニュース

【産経抄】5月28日

 トランプ米大統領は、北朝鮮との核をめぐるやりとりを「難しいポーカー」と表現したことがある。オバマ前大統領は、ポーカーの名手として知られたが、核外交のゲームでは自分の方が一枚上との思いが強いのかもしれない。
 ▼確かに先週切ったカードは、北朝鮮を震え上がらせた。来月12日にシンガポールで開催予定だった、米朝首脳会談の中止通告である。それまで会談中止をちらつかせ悪態をついてきた北朝鮮は、態度を一変させた。政府高官は対話を求める談話を発表し、ついに金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長自らが行動を起こした。
 ▼韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は昨日の会見で、26日に開催された南北首脳会談は、その前日に正恩氏から申し出があったことを明らかにした。正恩氏は、米朝首脳会談への「確固たる意志」を表明したという。トランプ氏はそれを確認すると、待ってましたとばかりに、米朝会談を当初予定通りの開催をめざす考えを示した。
 ▼トランプ氏が尊敬するニクソン元大統領は、外交を何より得意としていた。ニクソン氏は自らの外交戦術を「マッドマン・セオリー(狂気理論)」と呼んだ。狂気のふりをしてまで、相手を恐れさせ譲歩を引き出すというものだ。それを受け継いだトランプ氏は、予測不可能な言動で、今のところ北朝鮮を翻弄している。
 ▼ただ北朝鮮は、これまで幾度も裏切りを重ねてきた。米国が求める「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」に簡単に応じるとはとても思えない。キッシンジャー大統領補佐官ほどの名参謀を持たないトランプ氏が、最後の詰めを誤る可能性もある。
 ▼拉致被害者の帰国実現を急ぐ日本としては、会談失敗を含めたあらゆる事態を想定しておかなければならない。