金正恩委員長 示すべきは真の非核化だ

主張

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、韓国の文在寅大統領と急遽(きゅうきょ)会談し、米朝首脳会談の開催について、「確固たる意志」を表明した。

 南北会談を持ちかけたのは北朝鮮側だった。トランプ米大統領から米朝会談の中止を通告され、金氏は慌てたのだろう。北朝鮮に融和的な文氏に救いを求めた格好である。

 会談では「朝鮮半島の非核化実現に努力していく」ことで一致したという。だが、トランプ氏との会談を切望している割に、金氏は新味のあることを語らない。

 完全で検証可能かつ不可逆的な方法で核など大量破壊兵器とすべての弾道ミサイルを廃棄するのか。拉致被害者を全員解放するのか。そこを明確にしなければ、意味のある会談にならない。

 南北会談の知らせを受けてトランプ氏は、北朝鮮との間で再び準備に入ったことを明かし、6月12日開催への期待感を示した。相手の誠実な取り組みを引き出せるかどうかをみているのだろう。

 金氏がいう「朝鮮半島の非核化への努力」などは、4月の南北会談時の共同宣言と変わらない、偽りの非核化表明というべきだ。

 その後の北朝鮮は、非核化と制裁解除・体制保証などの「段階的かつ同時的な措置」を唱えた。

 自らを核保有国と位置づけ、「非核化」を小出しにして、その都度見返りを要求する。気に入らなければ、いつでも言いがかりをつけて引き返す。そうした態度を変えたようには見えない。

 24日の核実験場爆破の際に、米国などの専門家を立ち会わせなかった。これも、北朝鮮の核戦力、核計画の把握を妨害する隠蔽(いんぺい)のためとみられる。

 自身と体制の延命を図ることを最優先にしており、真の非核化への誠意はまったく感じ取れない。泣きを入れられた文氏は、強面(こわもて)を隠して微笑(ほほえ)む金氏につけいれられてはなるまい。

 トランプ氏は会談中止を表明した際、「米国の安全のためにはいかなる妥協もしない」と語った。この立場を貫かなければ、金氏を翻意させることは難しい。その認識を共有してこそ、国際社会は平和と安定を確保できる。

 安倍晋三首相は6月上旬にもトランプ氏と会談する。非核化と拉致問題の解決が実現するまで、北朝鮮への圧力を緩めない原則を改めて確認してもらいたい。