イラク日報の調査 「精強さ」増す契機とせよ

主張

 防衛省が陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報問題に関する調査結果を公表した。

 国会や情報公開請求に対して「存在しない」と説明しておきながら、実は保存されていた。ずさんな公文書管理をめぐり関係者を処分し、監察組織新設など再発防止策を講じたのは当然だ。

 南スーダン派遣日報の隠蔽(いんぺい)問題とは異なり、今回の調査では、イラク日報をめぐる組織的隠蔽は「なかった」と結論づけた。

 浮かび上がったのは、担当者の日報へのずさんな認識や探索指示の不徹底である。

 日報が見つかった陸上自衛隊研究本部(現教育訓練研究本部)の担当者は、報告すべき文書だと認識していなかった。同本部では、日報発見を知らされていなかった別の担当者が情報公開請求に「ない」と回答した。

 統合幕僚監部の担当者は曖昧な伝達で、稲田朋美防衛相(当時)の再探索の指示を不徹底なものにした。いいかげんな対応は、これきりにしてほしい。

 イラク日報の問題は、公文書管理の不手際に限定してとらえてはならない。自衛隊の精強さを増す観点からの改革が欠かせない。

 指揮命令系統が機能することは、軍事組織である防衛省自衛隊の生命線である。稲田氏の指示がうまく伝わらなかった点を反省し、再発防止策が防衛相の重要な指示命令について、文書で具体的に伝える、としたのは妥当だ。

 稲田氏の言動にも問題があった。日報は「ない」と、安易に答弁したことが問題を拡大した。再探索の指示が言いっぱなしになった責任は自身にもある。その点も含め猛省すべきだ。防衛省自衛隊は国家国民を守る最後の砦(とりで)である。指揮官である防衛相は、生半可な覚悟では務まらない。

 日報の位置づけを見直す改革がないのは疑問だ。日報は部隊行動の詳細が記される軍事文書だ。機微な情報は黒塗りをしたうえで公開されるが、自衛隊の行動類型は読み取れる。テロ勢力や敵対的な国の軍・情報機関が分析すれば、自衛隊の任務遂行や隊員の安全を損なう事態にもなりかねない。

 政府は、日報など自衛隊文書の一部を一般行政文書と異なる位置づけに改め、安易な公開は避けるべきだ。保存と数十年後の原則公開を義務づけ、自衛隊の精強さと情報公開を両立させればよい。