アホウドリ復活 世界に羽ばたく大成果だ

主張

 羽毛を目的とした乱獲で一時は絶滅が宣言されたこともある大型海鳥・アホウドリの個体数が着実に増え続け、完全復活を遂げた。

 大きな朗報である。

 災害に遭遇しても人間の手を借りることなく、自力で生息数を伸ばしていける目安とされる5千羽の水準を、ついに超えたのだ。

 奇跡の復活は、一人の鳥類学者の40年越しの研究と営巣地保全の活動なしにはあり得なかった。感動的な偉業である。

 東邦大学名誉教授の長谷川博さんが、伊豆諸島の鳥島を最初に訪れたのは昭和51年のことだった。以来、毎年2回は無人の火山島である鳥島に渡航し、帰島する成鳥と巣立つヒナの数などを調べてきた。単独行も多いので危険と隣り合わせの研究だ。

 ジョン万次郎が鳥島に漂着したころ、アホウドリは北太平洋の全域に分布していた。彼らは生活史の半分以上を海上で暮らし、秋から翌春にかけての繁殖期にだけ、自分が生まれた島に戻る。

 明治中期から始まった羽毛目的の捕獲では、この在島期間が狙われ、鳥島では500万羽が殺された。人間の金欲が、優美な海鳥を絶滅の淵に追い込んだのだ。

 個体数の復活には、繁殖の阻害要因を取り除くことが必要だった。長谷川さんは、地面にある巣の卵やヒナが土砂崩れで死なないようススキを植えたり、巣作りの場所を島内の安全なエリアに誘導したりするなどの工夫をした。環境省や東京都も力を貸した。

 そうした努力や協力の積み重ねで、この5月には観察史上、最多の688羽のヒナが巣立ち、鳥島集団のアホウドリの総個体数は、5165羽になった。

 世界の生態学者が注目するフィールド研究の成功例である。スケールの大きさも素晴らしい。短期成果主義に縛られていては、かなわなかった業績だ。見守った東邦大学の見識も評価に値する。

 目標に向かって努力を続けた長谷川さんには、多くの人が声援を送り、協力を惜しまなかった。

 大海原を高速で飛ぶ、美しい大型海鳥の名誉を、この機会に回復したい。長谷川さんは、かつて彼らが呼ばれたオキノタユウ(沖の大夫)が、和名にふさわしいと考えている。アホウドリは人間の愚かさの記念として別名で残すのがよいという。異議なしである。