5月18日

産経抄

 コーポレートアイデンティティー(CI)という言葉が、流行したことがある。企業文化のイメージを確立して、わかりやすく発信する戦略である。その火付け役となったのは、昭和60(1985)年に発足したNTTだった。

 ▼すでに電電公社時代から、民営化後の新社名は、「日本電信電話」と決まっていた。しかし、当時の真藤恒(ひさし)総裁は不満だった。「電話だけでなく、最先端技術で世界を変えたい」。日本電信電話の英語表記の頭文字から取ったNTTの呼称は、そんな真藤氏の思いを反映している(『誰かに教えたくなる「社名」の由来』本間之英著)。

 ▼国内鉄鋼最大手の新日鉄住金は来年4月から、社名を「日本製鉄」に変更する。こちらはあえて、「日本」を強く打ち出した。問題は読み方である。昭和25年に解体された国策会社の日本製鉄は、「ニホン」だった。新社名は「ニッポン」である。

 ▼実は、国号「日本」の呼び方はいまだ決まっていない。日常会話では、日本海、日本画、日本酒などと、ニホンと発音する語が圧倒的に多い。ところが、オリンピックで応援する際は、「がんばれ、ニッポン」である。

 ▼柔らかくくだけた響きのあるニホンに比べて、ニッポンは、海外を意識して改まった力強さを感じさせる。ちなみに「日本電信電話」「全日本空輸」「日本郵船」の各企業も、ニッポンと読ませる。

 ▼新社名の英語表記は、「NIPPON STEEL CORPORATION」となる。「海外に出て行く時に日本発祥の製鉄会社であることを明記した方がわかりやすい」。会見での進藤孝生社長の説明は、納得できた。小欄は、ソニーが米国発祥の企業だと信じ込んでいた、外国人を何人も知っている。