【主張】北核実験場の廃棄 駆け引きを冷静に見抜け - 産経ニュース

【主張】北核実験場の廃棄 駆け引きを冷静に見抜け

 北朝鮮が北東部豊渓里の核実験場廃棄を、今月下旬に実施するという。外国メディアを招き、坑道爆破などの様子を公開することも発表した。
 「非核化」への取り組みを目に見える形で世界にアピールしたいのだろう。だが、実験場は地盤崩壊などで既に使えないとの指摘がある。技術検証が進み、核実験自体の必要性が薄れたともいわれる。
 金正恩朝鮮労働党委員長との会談を控えるトランプ米大統領は、「賢明で丁重な意思表示だ」と歓迎しているが、実質的な意味に乏しいパフォーマンスという側面があることを冷静に見極めたい。
 会談日程が具体化し、中国なども巻き込んだ外交駆け引きが活発化している。その帰結は、北朝鮮による非核化であり、大量破壊兵器とあらゆる弾道ミサイルの放棄も含まれなければならない。
 そもそも「検証可能な非核化」を進めるつもりなら、廃棄ではなく、査察を前提に現状を保存すべきなのである。北朝鮮は2008年6月、北西部寧辺の核施設の原子炉冷却塔を爆破した際も、米韓メディアを通じて映像を世界に流した。
 ポンペオ米国務長官は核放棄の見返りとして「体制保証」の確約や米企業の投資などに言及した。完全な非核化を実現する上での駆け引きといえよう。
 ただ、双方のやりとりが関係国に制裁緩和が近いとの予断を抱かせる懸念はある。包囲網に綻(ほころ)びを生じさせてはならない。いま圧力を緩めるのは、問題解決を遠のかせる。
 南北首脳会談の直後、東シナ海で北朝鮮への石油を止める制裁をすり抜ける「瀬取り」が、韓国船籍タンカーの関与で行われようとした疑いがもたれている。
 朝鮮中央通信は日本人拉致について「既に解決済み」との立場を改めて強調した。米朝会談でトランプ氏が提起するのを事前に牽制(けんせい)したものとみられる。
 核実験場廃棄の際に招待される外国メディアの中に、日本は含まれていない。見せかけの非核化に付き合うことはない。
 日本は対北圧力の継続を主導し、核、ミサイルの放棄、拉致問題の解決を訴え続けている。日本が外されるのは、その姿勢が正しいことを示すものだ。国内にもある「日本置き去り論」に戸惑う必要などない。